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さっき、思ったことを声にしたいと強烈に思った欲求は急速にしぼみ、私は決まりが悪いまま何となく場を持たせようとスマホを出した。
カメラにして、画面を見るが、どうしてもさっきの感動には及ばない。それでも私は十枚、二十枚と写真を撮った。
写真を撮るより、心に焼き付けたほうがよいのではないか。
そう思って遠くに目をやった。
しかし、決まりの悪さはおさまらない。
背後のヤマザキくんの様子をうかがっているのだが、憎らしいくらい平然としている。
もしかして、私がこんなにヤマザキくんに動揺しているのに、彼の方は慣れているのだろうか。腕の触感がまだ残って、こんなに心臓の鼓動が激しくなっているのに。
と、ヤマザキくんが室内に戻る気配がした。ほっとして背中にこもっていた力を抜く。ようやく少し落ち着いた。
木漏れ日、きれい。
光、きれい。
水面の輝き、きれい。
まるで水面が燃えているみたいだ。この感覚を表現するとしたらどうなるのだろう。
私の好きなファッションで表現するとしたら。
そういうことを意識的に考えていると、再び部屋から出てくる気配がある。
この音。予感はあった。
ヤマザキくんは重そうに、室内にあったソファを一個屋根の上に出しているところだった。
「ヤマザキくん?」
「そんなに気に入ったのなら、これに座って見ていればいいでしょう」
ひょろりとしてあまり力がありそうでないヤマザキくんが必死にソファを持ちあげているので、私は慌てて手伝うために窓辺に戻った。
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