退屈な講義のさなか

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退屈な講義のさなか

 冬の陽も窓越しに浴びているとすごくぽかぽかで幸せ気分になる。ああそうだ、これを「陽だまり」っていうんだね。  一階の教室で見上げていた葉の一つもない枝の繊細さ、透けて見える薄水色の空。  急に物が跳んで落ちる気配。  そう、私は陽だまりの中、退屈な物理学の講義を聞いているうちに、すっと意識が消えていたらしい。  長机の自分の席の前についていた両肘が前方へ滑り、そして物理の法則の通り、ルーズリーフを曲げ、シャープペンシルを弾き飛ばし、スマホが机の端にかろうじて半身突き出している状態。  ようやくそこで我に返った。  別に焦ることもなく、私は横着に椅子に座ったまま左手を伸ばし、シャープペンシルを拾いつつ、右手で机からはみ出したスマホを胸の下に滑り込ませる。  この講義は皆が退屈しているし、私と同じ状態の学生ばかりなので、私は安心して一回伸びをし、再び机の前に両肘を突きかけた。  そのときである。  はじめて──ヤマザキくんに声をかけられたのは。  そのときは、ときおり講義で見かけるこの男の子がヤマザキくんという名前だということさえ知らなかったのだが。
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