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4.長雨
またあの夢だ。
駅に着いた時、あまりにひどい雨で、傘も役に立ちそうもなく、弥生に電話した。晴也も陽菜も帰りが遅かったため、晩御飯がまだとのことで、車で私を駅でピックアップして、家族で食事をしましょうということになった。
改札を出たところで空を見上げると、飲み込まれそうな漆黒の闇から、透明な矢が無数に降り注いでいた。バチバチと地面で爆ぜる雨音を聞きながら、私は壁にもたれて読みかけの本を開いた。
家から駅までは、車で5分ほどだ。ところが、待てど暮らせど我が家の車の姿がロータリーに現れない。あまりに遅いので、弥生に電話をするが呼び出し音がなり続けるだけであった。運転中なのだろうと、晴也、続いて陽菜にもかけてみるが、やはり電話に出ない。
弾けた雨粒が白い靄のようで、私はスマホを耳にあてながら、また真っ黒な空を恨めし気に見上げている。改札口からは、家路を急ぐ人達が次から次へと流れ出てくる。
孤独ってこんな感じかな。
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