5.どうしてそうなる?

1/1
前へ
/7ページ
次へ

5.どうしてそうなる?

 リビングに降りていくと、晴也と陽菜が難しい顔をしてソファで腕を組んでいる。彼らの視線の先を追うと、弥生が息を切らしながらジャージ姿で立ち尽くしている。  「おふくろ、歌下手なのな」と晴也。  「ダンス、致命的」と陽菜。  え?え?何のこと?  え~どこがダメなのよ~と弥生がふくれっ面をする。  「リズム感も音程も微妙」と、また晴也。  「盆踊りみたい」と、また陽菜。  ちょっと待ってください。何か、私抜きで話が進んでたりしません??  「あの~ちょっといいですかね?」 思わず三人に声をかける。  「これは一体何してるのかな?」  「二次審査の準備」と弥生が言う。  当たり前でしょみたいに言わないで。家族会議はどうしたのよ?  「いいじゃん、別に。おふくろがやりたいって言ってるんだからさ」  「そうだよ。私はママ応援しちゃう」  ダメだ。どんな手を使ったかは皆目見当つかなかったが、子供たちはあっさり懐柔されたようだ。どうする、俺? 弥生がアイドル? 何か反論しなければ。ん?何を?  そもそも、反対する理由って何だろう。恥ずかしい? 違うな。生活の変化?いや、受かってもいないのに関係ないか。そうか。俺の知らない弥生になるのが嫌なんだ。それって随分、自分勝手だな。  そう思った時、私の中で何かが振りきれた。  「じゃあ、パパも応援しちゃおっかな」  あ~あ、言っちゃった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加