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5.どうしてそうなる?
リビングに降りていくと、晴也と陽菜が難しい顔をしてソファで腕を組んでいる。彼らの視線の先を追うと、弥生が息を切らしながらジャージ姿で立ち尽くしている。
「おふくろ、歌下手なのな」と晴也。
「ダンス、致命的」と陽菜。
え?え?何のこと?
え~どこがダメなのよ~と弥生がふくれっ面をする。
「リズム感も音程も微妙」と、また晴也。
「盆踊りみたい」と、また陽菜。
ちょっと待ってください。何か、私抜きで話が進んでたりしません??
「あの~ちょっといいですかね?」
思わず三人に声をかける。
「これは一体何してるのかな?」
「二次審査の準備」と弥生が言う。
当たり前でしょみたいに言わないで。家族会議はどうしたのよ?
「いいじゃん、別に。おふくろがやりたいって言ってるんだからさ」
「そうだよ。私はママ応援しちゃう」
ダメだ。どんな手を使ったかは皆目見当つかなかったが、子供たちはあっさり懐柔されたようだ。どうする、俺? 弥生がアイドル? 何か反論しなければ。ん?何を?
そもそも、反対する理由って何だろう。恥ずかしい? 違うな。生活の変化?いや、受かってもいないのに関係ないか。そうか。俺の知らない弥生になるのが嫌なんだ。それって随分、自分勝手だな。
そう思った時、私の中で何かが振りきれた。
「じゃあ、パパも応援しちゃおっかな」
あ~あ、言っちゃった。
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