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翌朝の六時、私は眠い目を擦りながら起床した。さて、朝の洗濯をしなくては。そう思いながら脱衣場に置かれた洗濯機の前に立った私の前には衝撃の光景が広がっていた。なんと、もう洗濯機が回っているのである。
夫が洗濯機を回してくれたのだろうか、それもこんな朝早くに。
朝早く起きて暇だったのかな? 私がそんなことを思いながらダイニングルームに向かうと、またもや衝撃の光景が広がっていた。テーブルの上に和食御膳が二膳乗っており、夫は既にそれを食べにかかっていたのである。
「お、おはようございます」
「おう、おはよう。朝飯は作っておいた」
夫の作る朝食であるが、ホテルの朝食に出てくるような和食御膳であった。味も勿論抜群たるもの。瑞々しい御飯、それに合う赤だしの味噌汁、出汁の味がしっかりとした出汁巻き玉子、甘い塩麹で焼いた白身魚の切り身、塩辛くも甘みのある漬物。
「おいしい!」
私は夫が作った朝食を褒めた。しかし、夫はそれに対して何の反応もせずに黙々と朝食を食べ続けていた。
すると、洗濯機のブザーの音が聞こえてきた。洗濯の終了を報せるものである。それと同時に朝食を終えた夫はスッと立ち上がり、脱衣場へと洗濯物を取りに行き、リビングで黙々と畳んでいた。その畳み方はファストファッションブランドの店舗の棚に置かれた衣類と同じでカクカクとしており抜群の見栄えであった。私の衣類の畳み方とは天と地の差である。
私は洗濯をしてくれた夫に礼を述べた。
「今日は洗濯の方ありがとうございました」
「これからは俺が洗濯をする。朝食も作っておいてやる。朝の掃除もする。君はもう少し遅く起きてきていいぞ?」
「え? これはどういったことで?」
「これからは俺がこの家の家事をするからな。昼間、家にいる君に頼みがあるんだ」
「なんでしょうか」
「家を散らかすな。それだけでいい。昼飯もなるべく外に行ってきなさい、ゴミも減るしな」
夫がそう言っている間に私も朝食を終えた。すると、夫は食器を素早く流し台に運び、黙々と洗い始めた。
「あら、食器ぐらい自分で洗いますのに」
「君に洗ってもらうと、汚いんだよ。皿には食べたもののカスが残ってるし、皿の裏に洗剤が固まってた時もあったぞ? 洗剤つけてスポンジでやる気なく擦るだけでしょ? それで食器が洗えてると思ったら大間違いだよ?」
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