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夫が家事の一切を行うようになってから、私は自分の存在意義がわからなくなっていた。
妻の立場にありながら、毎日寝て起きて趣味を行うだけの生活になればこうもなろう。
子供が出来れば、会社勤めの夫に育児は出来ないためにこの生活の一変の切欠になると思ったのだが…… 生憎と子宝に恵まれることはなかった。こればかりは天の采配、どうしようもない。
罵倒もされないが、何もされないしさせてもらえない。
こんな夫婦生活に耐えられなくなった私は夫に提案を行った。「これからは私も家事をしたいです」と。
しかし、夫は冷たい目つきで私をじっと見つめてきた。
「君は何も出来ないんだから、何もしなくていいよ。動かれるだけ迷惑だ」
「なら、家事を教えて下さい。今はまだまだですが、キチンと出来るようになりますので」
「君に任せるより、自分でやった方が効率がいい。成果もでる。もう何もしなくていい」
私の提案もシャットアウトである。言うに事欠いて、何もするなとは「放置」と言う名のDVではないか。私の怒りが爆発した。
「なら私は何のためにいるのですか! あなたにとって私は必要な存在なのですか!?」
夫は困ったように肩を竦めた。
「じゃ、逆に聞くけど夫婦って何?」
いきなりの哲学的な質問に私は戸惑った。私が答えられずにいると、夫は徐に口を開いた。
「辞書やインターネットの検索とかでは『男女が婚姻関係で結びついたもの』とか『お互いに補い合う男女』とかって答えが出るよ? でもさ、前者に関しては判子をつけばすぐなれるもので心は関係ないじゃないか、婚姻関係なんてこんなものだよ。後者に関しては君は俺を補ってくれてるか? 何も出来ない君を俺が補ってるだけじゃないか」
後者に関しては私には何も言えない。口を貝のように閉じるしかなかった。
夫はそのまま続けた。
「実はさぁ、俺って一人で何でもしちゃうし、やりたがるし、出来ちゃうタイプなんだよね。自分が天才とかって驕り高ぶるつもりはないんだけどさ、人から言わせれば『孤高』って呼ばれるタイプ? 夫婦ってお互いに補うものって言ったと思うけど、俺は妻たる存在に補って貰う必要がないんだよね。多分だけど、君より家事出来る普通の女の人と結婚しても同じこと考えてたと思うよ? 多分、文句ばっかり言ってたと思う」
「じゃあ、何で結婚したんですか? 妻が必要ないならお見合いなんて受けなければよかったのに」
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