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夫は暫く天を見上げ考え込んだ。出てきた答えは我が耳を疑うものであった。
「愛してないかも。そもそも、見合い結婚で初対面の相手を愛しろって言う方が無茶じゃないか? そんな相手でも一つ屋根の下で暮らしていれば慣れるってもんだ、これは愛じゃない」
「そう思っているなら何故に見合いを引き受けたのですか!?」
「親が持ってきた見合いだから。君じゃなくても受けていたとは思うよ? 極端なこというと、誰でもよかったんだ。未婚者でさえなくなることが出来ればね」
「私は道具だったのですか? 未婚者をやめるための!」
「そうだね。俺は生涯未婚でも良かったんだよね。見合いを持ってきた親を安心させたいとも思わないし、別に子供は欲しくないし、友人達が結婚してても別に羨ましいと思わないし、最後は誰かに看取ってもらうこともなく孤独死でもいいと思ってた。ただ未婚って言うだけで回りから卑下されたり、正当な評価を得られないのが嫌だったんだ。それが結婚した理由。ああ、こういう考え方する時点で俺って他人の目を気にするし、他人からはよく見られたいって考えるタイプの『性格破綻者』なのかもしれないね」
それを聞いた私はその場で膝を折り、泣き崩れてしまった。すると、夫は優しく肩を叩いてきた。
「終わりにしようか? 俺としては既婚者になって偏見の目で見られなくなった時点で目的は達成出来てるんだ。後は君と離婚しようが、死別だろうが、俺は既婚者のままでいられるからね。君はまだ若い、やり直しが出来る段階だ」
私は逃げるように部屋に飛び込み、寝床に入り枕を濡らすのであった。
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