【滅】

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〜中央区〜 浄土真宗築地本願寺。 戦いを終え、本堂へと入る華柳知念と柊羅(ヒーラ)。 何人かがその姿に驚く。 「華柳様、京へ帰られたのでは?」 侍従職の速水(はやみ)が出迎える。 得体の知れないヒーラを(いぶか)し気に見た。 結界によって、境内で繰り広げられた死闘のことは知らない様子である。 「その予定が、ちょっと引き留められましてね」 ニコリと微笑む歌舞伎者。 せっかちな柊羅。 「枚方朔也はいるか?」 無作法な若者に、ムッとする速水。 すかさず知念がフォローに入る。 「朔也様にお会いしたいのですが…」 言いかけて、その顔色から悟った。 (遅かったか) 「枚方様は、つい今し方お出掛けになられました。電話も取り継がぬ様、申しつかっております。ご用ならこの私が…」 「チッ、逃げやがったな!」 宗馬をやられ、穏やかではない柊羅。 「なんですと⁉️」 「まぁまぁ💦。ところで…つかぬ事をお聞きしますが、こちらに久我山宗守様がお見えとか…?」 (…) 一瞬、視線を左上へと逸らした速水。 直ぐに目を戻して答える。 「さぁ…確かニュースでは、警官を殺害して逃亡中だと聞きましたが? 勿論ここには…いません」 食って掛かりそうなヒーラ。 体を被せてそれを止める知念。 「ですよね〜やっぱりただの噂話し。これは失礼いたしました。私用なので、要件は直接伝えます。どこへ行かれたかご存知なら、教えて頂きたい」 「さて…大変急いでおられた様で、留守を預かることも、他の者から伝え聞きましたので」 尤もらしく首を傾げる。 ちょうどその時、ヒーラの携帯が鳴った。 スマホの表示はルナ。 それを覗き見た知念が、素早くスマホを奪う。 「おぃ!ちょっと⁉️」 「もしもし京都の華柳知念です。その声は…紗夜刑事さんですね。はい…はい、何と!それはお早いことで。では、宗守様は無事保護されましたか。良かったぁ〜一安心です。ご苦労様でした」 ふぅ…と息を吐いて電話を切り、ヒーラに渡す。 訳が分からず、怒りのルナコールを待つヒーラ。 「お騒がせしました。久我山宗守様は、警視庁の刑事課に保護された様です。では、失礼いたします。こちらには、警察の方が来るでしょう。直ぐに朔也様に…あっ、電話はできないのでしたね。では皆さんで頑張って下さい」 軽く頭を下げて背を向けた。 「ちょっと…」 引き止めるには、事態が飲み込めていない速水。 見送るしか、なすすべはなし。 「ヒーラさん、行きますよ」 「えっ…あ、全く…」 今にも鳴りそうなスマホを片手に、後に続く。 怒ったルナは、とんでもなく恐ろしい💧 「瑠奈さんなら、掛けて来ませんよ」 「えっ? なぜ分かる? …って、そもそもお前が勝手に出るのが悪い❗️ 何を考えてんだ?」 「ごめんごめん💦。でも速水のあの反応で、宗守と朔也が一緒なのは間違いない。そして、もうここには居ない。瑠奈さんが知りたかったことです」 「じゃあ、そのために?」 「はい。タイミングよく、瑠奈さんの電話が来たので、確信を得るために下手な猿芝居をね。ハハ」 照れ臭そうに笑う知念。 怒る気力も失せる。 「警察やこちらの動きが、枚方にバレるんじゃ?」 「それはない。電話も取り継がない様にと言われてました。朔也様の言葉は絶対ですし…連絡したくても、GPS追跡を避けるため通じないでしょう」 「なるほど…で? これからどうする?」 その問いに答える前に、電話を掛けた。 「鳳来刑事、京都の華柳知念です。枚方朔也は、久我山宗守を連れて出た後でした。おそらく高野山東京別院へ。そっちは麗夜様達に任せます。神崎刑事に代わって貰えますか」 咲のボヤきが聞こえ、昴が電話に出た。 「はい、神崎昴です。大丈夫なんですか?」 呪鬼に襲撃されたはずの知念。 まさか築地本願寺にいるとは思わなかった。 「ええ、私は何とか。呪鬼は消えて無くなりました。それより…そろそろ見つけた頃では?」 ニヤリと笑む知念。 (コイツ…) 初めて見るその表情に驚くヒーラ。 優雅さや爽やかさが消えた素の姿。 華柳流の本質がそこにあった。
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