【真】

1/12
前へ
/38ページ
次へ

【真】

今までのあらまし。 奈良東大寺。 華厳宗総本山で開かれた例会の夜。 天台宗座主(ざす)華僑林(かきょうりん) 天膳(てんぜん)が事故で死去。 後を託された娘、麗夜(レーヤ)は、浄土宗門主(もんす)の娘 日下部(くさかべ) 真理(まり)と、真言宗智山派(ちざんは)座主の息子 神崎(かんざき) 鶴城(つるぎ)の二人と契りを交わし、京都三十三間堂にて覚醒を果たした。 仏教界の権力者、高野真言宗座主の久我山(くがやま) 宗守(むねもり)真姫羅(まきら)を遣って真言宗智山派総本山の知恩院と、浄土宗総本山の智積院(ちしゃくいん)を焼き払い、更には自宗総本山の高野山に、邪魔な上僧達を集めて焼き葬った。 しかしその直後の高野山で、指名手配中の魔女リドール・クラリスにより、真姫羅は惨殺される。 港区高輪の高野真言宗東京別院。 その宗務庁ビルでは、弟の久我山 将生(まさき)が何者かに殺害され、後に就いた榊原(さかきばら) 久遠(くおん)は、翡翠(ひすい)を使って秘書の新月(あらつき) 結女(ゆめ)への疑いと、真犯人を探らせる。 宗守は、天台宗座主代行の華僑林 蒼樹(そうじゅ)を同席させ、異例の記者会見を開くが、蒼樹はその場を利用して、宗守の悪業を公表した。 一方、ヒーラの指示で不知火(しらぬい) 瑠奈(るな)辻桐(つじきり) 宗馬(しゅうま)望奈萠(まなも) 柊羅(ひいら)の3人は、警視庁刑事課の情報や、アメリカから入国した4人のカルト集団の重要人物、更には呪鬼(じゅき)と呼ばれる妖術師を調査する。 蒼樹の策略により、知恩院の屍人(しびと)使いと公言されたレーヤは、真言豊山派(ぶざんは)七山(ななやま) 佐介(さすけ)を身代わりにして警察の手を逃れる。 そして真理と鶴城を連れ、曹洞宗宗務長官、神巳沢(かみざわ) (らん)のいる東京グランドホテルへ身を隠す。 そこで日下部 法成(ほうじょう)の死を知り、怒りに燃える真理に、幼馴染の枚方(ひらかた) 陽平(ようへい)が呪鬼である疑いを告げた。 ヒルトン東京に現れた怪しい外国人4人。 そして華厳宗総本山 東大寺の住職、吉田 北西(ほくさい)。 レーヤを助け、アメリカからリドール・クラリスを追って帰国した、魔女のKANNA(カンナ)。 浄土真宗に身を置く華柳(はなやぎ) 知念(ちねん)は、亡き友の為に曹洞宗の不正を暴かんとし、本願寺派浄土門主の枚方 朔也(さくや)と共に上京。 双子の兄である曹洞宗宗務総長の華柳知念に成りすまし、宗務管長の神巳沢蘭に会い、平賀(ひらが) 永人(ながと)の悪業を告げ、『操心術』の暗示をかける。 無意識に操られた蘭は、管長の平賀永人を襲うものの、()しくもそれを察知した、兄の華柳知念により阻止された。 平賀永人への疑念を確かなものとした華柳知念は、一方でレーヤへの信頼を認める。 暗殺に失敗した弟の華柳知念は、枚方朔也達の不穏な動きを察し、京へ戻ることを決めた。 枚方朔也は、釈放された久我山宗守に刑事殺しの容疑を被せ、身柄を拉致して築地本願寺へ。 狩川(かりかわ) 楓呪(ふうじゅ)祗園(ぎおん) 火輪(かりん)が、朔也の策略に従う。 影から無数の腕を出し、強大な力を秘めたレーヤ。 1002体目の千手観音と、取り戻すと決めた両腕。 最高位の蓮華座など、望みもしない。 レーヤの左右には、風神と雷神の真理と鶴城。 その真の役目を、知らぬまま… そして迎える冥闇の新月、裏観月(うらみつき)。 古き時代から伝わる、闇の観月祭である。 『恨み月』とも『怨み憑』とも称され、今も尚その冥主が説いた『月冥宗(げつめいしゅう)』の月華月陰経(げっかいんぎょう)を唱え、冥主復活を祈る者達がいた。 天台と真言により戒められた2000年の封印。 それが解かれる(とき)を察した各宗派は、この東都に集い、或いは導かれ、その力を得んとする。 その冥力は、ある者の謀略によって、異国の魔をも呼び寄せ、今正に、雌雄を決する破局を迎えようとしていた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加