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「サンデリラ、近頃他の世界から召喚された聖女がやたらと私への距離が近いのたが、どう思う?」
少なくともそれを婚約者であるわたくしに相談すべきではありませんわ、王子。
とは思っても言えない。
この聖女、今はまだ王子殿下に近付いて媚を売る程度だが、そのうち王子は聖女に陥落し、わたくしは有り得ぬ冤罪で処刑されて死ぬ。
一度目はそうだった。
二度目は聖女に近付かぬよう王子に進言したものの、嫉妬と取られて「サンデリラがそのようなことを申すのは珍しいな」と、わたくしの恋情を測るために聖女に近付いて陥落しわたくしは有り得ぬ冤罪で処刑されて死ぬ。
所謂生まれ変わりを三度果たしました。
三度目の今回はどうしましょう?
いっそ、王子と聖女の仲を応援してわたくしとの婚約を解消していただきましょうか?
幸い、わたくしは王子に恋しておりませんもの。
一目惚れしたとかいう馬鹿で浅はかな理由でわたくしを婚約者に据えたのは王子ですもの。
それすらも聖女に簡単に崩落されて、一目惚れした人間は何度もどなたかに惚れ直すものなのですね。
それがお互いのためですわ。
「王子、聖女様はきっと慣れぬ異世界で気苦労が絶えぬことと存じます。王子が支えて差し上げるべきですわ」
王子が好きだという微笑みでそう奏上すれば、王子は顔を赤くし「それもそうだな」と答えて聖女様の助力を買って出ました。
そして王子と聖女の仲は深まりました。
わたくしは前世で散々語られた聖女の言う乙女ゲームの知識と共に不貞の証拠を集め、冤罪を掛けられた日には完璧なアリバイを作りました。
かくして断罪の日には見事勝訴をもぎ取り、王子と聖女の素質を疑うように仕向け、わたくしは帰りの馬車に乗りました。
明日にはわたくしとの婚約は解消されていることでしょう。
そして、他のことでももちろんわたくしは手を抜きませんでした。
数日後、広場に人集りが出来ています。
みんな、魔女の処刑を楽しみにしているのです。
処刑が娯楽とか、二度も処刑された身分としては不快極まりないですが、今回は見届けなければなりません。
わたくしは、皆様に注意を促しておきました。
聖女様が予知能力だとかなんだとか、存じ上げないけれど先々のことを知りすぎていてこわい。まるで魔女のよう。
そう言えば聖女も段々疑わしく魔女になってしまうのです。
噂とは本当に恐いものですわ。
わたくしが一度目に陥れられたのも噂が切っ掛けでしたわね。
聖女が泣きわめいておりますが、助けてくださる方はいません。
それでは、ごきげんよう。聖女様。
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