13.『if*マリッジ』

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13.『if*マリッジ』

 パソコンを起動させた叔母さんが、キーボードで何かを打ち込み始めた。   「今回の反応もフィードバックさせなくちゃね」 「AIに? それって将来的に診断結果見た人がショック受けないように調整していく感じ?」 「そ。ゆくゆくは耳障りのいい言葉が並んでいくんじゃないかしら」 「それって意味ある?」 「あるわよー。AIの精度は高くなるし、AIが相性いいって言うなら会おうって人も増えるだろうしね。……挑戦より失敗を避ける時代だもの」 「そうなんだ?」  AIの精度と失敗を避けられるの関連が分からずに首を傾げる。叔母さんはもう湯気の出ていないマグカップからコーヒーを啜った。 「膨大なデータを元にAIが診断、マッチングしましたって方が、経験豊かな専門家とか有名人より影響力が出てくると言う話よ」 「ふうん」 「ほら、今はマッチングしても私が信じられなきゃ上手くいく期待もできないでしょ? 初対面ならAIが組みましたって聞いた方が期待値高いんじゃない?」 「まあ、そうかも」 「AIだと私情を挟まないって安心感もあるからね。『なんでこの人とマッチングさせたんですか』ってクレームがAIのせいにできるようになれば私も楽だわ」  どう? と聞かれて考えてみる。  とっくに砂糖と牛乳が混ざり合ったカフェオレの中でスプーンを回した。  渦を巻く薄茶色は、俺の思考と似ている気がした。 「……結局最後は人間が使うなら、どう使うかっていうのが大事なんだと思ったかな。文言良くしたって今回みたいなことは起こりうるじゃん。でも本人達の話聞いて、遠距離なら変わるかもって診断やり直すとか、そういう判断は人間が必要なんだよな。上手く言えないけど、最後が人対人なのは同じだよ」 「そうね。結局はそこが難しくて面白くて、人間の愛すべきところよね」 「ていうかAI褒めるけどさー、叔母さん自身が全然活用してないとこが答えだよな」 「私は運命の出会いを信じる派だからね……ってそもそも自分のためにこの仕事してる訳じゃないから!」 「ふーん」 「ちゃんと聞きなさい!」  今日のカフェオレはいい感じに仕上がった。  混沌も正しく整えれば、甘く美味しく飲み込める……なんて。    とりあえず、何の心配もなく飲むカフェオレは美味いという話だ。  ……いや、俺の受験が成功するかという懸念事項だけが残った。
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