1人が本棚に入れています
本棚に追加
「寒いな。だりー。」
俺はトナカイだ。
クリスマスイブだというのに、コンビニでサンタと一緒にバイトをしている。
駅から徒歩1分の立地にあるこの場所で笑顔でケーキを売っている。
俺生クリーム嫌いなんだよな。
いちごも酸っぱいの苦手だし。
でも笑顔だ。笑顔が金に変わるんだ。
「いらっしゃいませ。」
俺は笑顔で道行く親子に話しかけた。
子どもは僕の前に来て僕に笑顔を見せた。
その瞬間僕を蹴った。
クソガキめが。
親は自分の子どもに興味がなさそう。
さっさと僕の前を通り過ぎる。
「いらっしゃいませ。」
笑顔だ。笑顔。笑顔が、金に変わるのだから。
俺は23歳フリーターだ。大学を卒業したあと大学の先輩の起業話に騙されて結局卒業までに就活が間に合わず、全てが、バカバカしくなりフリーターの道を選んだ。
親はきちんと働けと言うし、将来がどうのとか小言をたくさん言うが構わない。今が良けりゃそれで良い。
今日僕は給与をもらう。この給与で彼女と外食に行くつもりだ。彼女は公務員として安定した生活をしている。なぜその彼女が僕と付き合っているかは、身体の相性が良いかららしい。
それも大事なことのひとつだ。
あと10分。アルバイトが終わる瞬間って、待ち遠しいな。
僕は走った。約100m。駅近くの喫茶店に集合だ。僕は金が無いから喫茶店には入らず前で待つ。彼女を待つ時間は嫌ではない。彼女がどんな服装で現れるのか、笑顔なのか。
それにしても今日は遅い。
もう一時間も待っている。どうしたのだろう。
事故にでも合ったらたいへんだ。
僕は彼女に連絡をする。しかし応答がない。
「おまたせ。」
彼女は現れた。一時間も待たせたとは思えない笑顔の顔で。
あれ?
隣りにいるやつは誰だ。
「和真、とりあえず中に入ろう。寒いし。」
僕らは、コーヒーを飲んだ。ただもくもくとコーヒーを飲んでいる。
「まり。あのさ、そろそろ説明してほしいんだが。」
「わかった。この人私の彼氏で魚平環くん。
でね悪いんだけど、和真別れたいんだけど。」
俺は黙った。窓からはパラパラと雪が降っている。
「じゃ。そういうわけで。会計は私が払ってあげるから心配しないで。」
彼女は、彼氏と帰っていった。
幸せな笑顔。ふわふわな服装。俺のためじゃなくあいつのためのもの。俺は馬鹿みたいにはしゃいじまったよ。涙が自然と流れてきた。
「ねぇ。ねぇってば。」
僕の眼の前に女が座っていた。いつの間に来たのかわからない。
「あんたも彼女にふられたの?」
「お前に話したくない。」
「あんたが話したいかどうかじゃないのよ。」
僕は面倒くさくなり喫茶店を出た。
「ねぇ。起きてよ。起きて。和真さん。石脇和真さん。」
僕は目を覚ました。あれ、いつの間に寝たんだっけ。僕はあたりを見渡した。白い壁、白いふとん。ベッド。
俺はどこにいるんだ。
しかも俺を見てる。
俺、動いてない。なんだかたくさん管がついているよ。
「理解できたかな。あなたもう少しで死んでしまうのよ。あなた、喫茶店から飛びだして車にはねられる運命だったの。でね、天使な私が来たわけ。」
「俺。死んだの?死んだのかよ。」
クリスマスに死ぬなんて。
「あのさ、話を聞いてる?あなたさえ生きたいと思うなら私の秘書として働けば可能だけどどうする?」
これが俺と彼女の出会いだ。
これからどんな未来があるかわからないけれど、生きているだけで幸せだ。
クリスマスプレゼントは、いのちと天使だ。
変わったものをもらえたものだ。
最初のコメントを投稿しよう!