悪役に仕立てられたので、そのようにしましたわ

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この世界『輝石に映る君を愛する』に転生した時は、やったー!って思った 攻略対象者のルビー様もサファイア様もエメラルド様もお素敵だけれど、わたくしがすきなのはやっぱり王道のシャルル・ダイアモンド様! 輝愛の世界では悪役令嬢なんていない。 略奪愛もなくて、正式な婚約者も居ないところからゲームはスタートするの。 だからヒロインが現れる前に頑張って頑張ってシャルル様の婚約者に選ばれた時は嬉しくてベッドの上で跳び跳ねてしまったわ。 メイドのローズにはしたないですと怒られたけど、私がシャルル様の婚約者になりたくて頑張っていたことを知っていてくれたから「今晩だけですよ」と言って一緒に喜んでくれたわ。 だから余計に嬉しくてその晩は寝るのが遅くなってしまったわ。 それからは、毎日お手紙のやり取りをして定期的に行われる二人のお茶会は毎日夢見心地で、とっても楽しかったわ。 毎日こんな日々が続けばと思ったけれど、いずれ婚姻したら永遠に結ばれるのよね。 胸をときめかせて毎日のようにローズにシャルル様の素敵なところを語って聞かせたわ。 ローズには笑われていたけれど、それだけわたくしは幸せなのよ。 それから幾年かして。 ヒロインのカラット・へイゼルが現れる学園生活が始まってしまった。 私はシャルル様がカラット・ヘイゼルに奪われたらどうしようって思ったけど、この世界では略奪愛はないはず。 それに、わたくしとシャルル様の築き上げたものがポッと出のヒロインに壊されるはずがないわ。 少し不安だけれど、わたくしははシャルル様を信じているわ! そう、思っていたのに。 ルビー様もエメラルド様もサファイア様も、シャルル様もカラット・ヘイゼルに侍っている。 おかしい。 輝愛は一人のルートしか選べなくて、逆ハーエンドなんてないはず。 何より、なんでシャルル様がカラット・ヘイゼルに愛を語っているの? わたくしはカラット・ヘイゼルを呼び出しお話を聞くことにしましたの。 そしたら彼女は自分も転生者であることを告げ、逆ハーがないなら作ればいいと無理矢理頑張って今の状況を作り出したのだそうよ。 そして、略奪愛もないはずなのにシャルル様がわたくしの元を去ってしまった原因を訊ねたわ。 「皆様を手に入れるために、あなたには悪役令嬢になってもらいたかったの」 カラット・ヘイゼルが醜悪な笑みで語る。 わたくしが、カラット・ヘイゼルを苛め抜く悪女として皆様に泣いて聞かせたのですって。 ありもしない苛めや暴言をでっち上げ、皆様に縋り付いて頼れるのはあなただけと嘯いて、皆様のお心を掴んだのですって。 嘘だらけの空っぽなヒロインにわたくしの幸せが壊されたの。 シャルル様との幸せだったあの時間は妄言のみですべて崩れ去ってしまったのね。 そう、そうなのね。 「悪役令嬢?」 輝愛の中ではそんなの存在しない。 みんなキラキラしていて優しくて、略奪愛なんてものは存在しない綺麗な世界。 それを壊したのはカラット・ヘイゼル。 あなた自身よ。 わたくしを『悪役』なんてものにしたのはどなたかしら? カラット・ヘイゼルは学園から姿を消し、ヘイゼル家はお家取り潰しになった。 シャルル様とのご縁も切りましたわ。 わたくしとの愛がないなら縁もないでしょう。 我が家との婚約解消による損害でお家が破産の危機らしいですが、知ったことではありません。 わたくしを悪役令嬢と呼んだのはあなたよ、カラット・ヘイゼル。 だからお望み通り悪役に徹してあげたのに、皆様いざやってみると震えてこちらに怯えるばかり。 自分が作り出した悪役に滅ぼされるなんてどんな気持ちかしら? まあ、わたくしには関係のないことですけれど。
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