5人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
母親が家を出たあと。しばらくして翠は黒い生物に聞いた。
「あなたは何者なの?」
翠はこの前読んだ小説に出てきた猫が喋っていたのを思い出して、そういった。
黒い生物は相変わらず「にゃーん」と鳴いていたが、少女の質問に驚いて一瞬きょとんとしたが、また猫のフリをし続けた。
「ねえ聞いてるー?私の言葉の意味わかってるんでしょ?」
すると、黒い生物は観念したように…
「なんでわかったんだい?」
と老婆のような声でいった。
「え?猫が喋った………?」
「お主。わかっていたのではなかったのか」
「私はただ冗談のつもりで…なんで?あなたは誰なの?」
翠は夢か現実かを確かめるように自分の頬を引っ張ったが、痛そうに顔をしかめた。
「知られてしまったのなら仕方がない。わしはアンバー。お主らの言う魔女のような者だ」
翠は勿論のことだが魔女なんて見たこともないし、信じても居なかった。
ずっと御伽噺にでてくるものとしか思っていなかったのだ。
「魔女って存在したんだ。それで、魔女様は何ができるの?」
「驚いたな。わしを前にあまり驚いた様子を見せない。普通ならもっと驚いてもよかろう」
翠は猫が最初喋ったときには少し驚いたが、魔女が存在していようと対して驚きはしなかった。
「だってこんなひろーい世界だもの。別に魔女ぐらい居たとて不思議じゃないわ」
魔女は少し考えるような仕草をして翠の手に自信の肉球をのせた。
「翠と言ったか。わしはお前を気に入った。質問に答えてやろう。実際に体験させてやろうか」
質問とは翠が、「魔女様って何ができるの?」と言ったことだろうか。
魔女は指をパチンッと鳴らすと美しい女性の姿になった。
「フフフ…すごいでしょ?」
と若い女のような声でいった。
「これが魔法?どうゆう仕組みでできてるの?」
翠は勿論。魔法を見るのが初めてだったが、対して驚きはしなかった。
「仕組みは秘密よ。あなた全然驚かないねぇ。まあ、実際に体験してみなさい」
そう言うとまた指をパチンッと鳴らした。
すると………?
「………え?」
翠の周囲を煙が囲んだ。翠は煙が目に染み、目を瞑った。
しばらくし、翠が目を開けると周りのものが大きくなっていた。
自分の手を見ると可愛らしい肉球がある。そして頭を触ると二つの耳のようなものが。そしておしりには細長い尻尾があった。
これは…もしかして?
『私、猫になった?』
魔女はフフフと笑いながら、指をパチンッと鳴らし、姿を消した。
翠はなんで消えてしまったのだろうか、どこに言ったのだろうかと最初は思ったが、自分の今の状況の方が大事だった。
『学校はどうしよう。お母様になんて言おう。絶対信じてくれないに決まってる。』
そもそも猫が喋ったりなんかしたらお母様びっくりして腰を抜かしちゃうかも。と翠は色々考えていた。
色々考えた末、翠はある決断をした。
『私。家出しよう』
翠は母親にこき使われたり自由のないこの生活に嫌気が差していた。
母親に暴力を振るわれたことも一度や二度ではない。
この姿なら家出しても別に周りになんとも思われないと思い、家出を決断した。
『あわよくばあの魔女を見つけて元に戻してもらおう。』
翠は家での生活は最悪だったが、楽しみにしていることもあったのだ。
だからずっとこの姿のままだと困る。
翠が楽しみにしていること…それは、学校。
最悪な毎日の中で、翠は学校だけは楽しみだった。
最初のコメントを投稿しよう!