猫になりました

1/4
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

猫になりました

「今日からうちの子になるアンバーちゃんよ」 アンバーと呼ばれた黒い生き物は、その名の通りの琥珀色の瞳を輝かせて「にゃん」と鳴いた。 その様子を一人の少女が見ていた。その少女は恐る恐る黒い生き物に近づいたが、黒い生き物は少女に「シャー」と威嚇した。少女は驚いてこの黒い生き物を連れてきた人物――少女の母親の背中に隠れた。 その様子に、少女の母親は… 「まだ人に慣れてないみたいね。頑張って仲良くして頂戴。(みどり)(みどり)と呼ばれた少女は母親の背中から離れようとはしなかった。 だって、黒い生物がこっちを睨んでいたのだから。 「お母様。この生き物は何ですか?」 少女(みどり)は母親に恐る恐る聞いた。 「あらやだ私ったら説明するのを忘れていたわ。実は私の友人が猫を拾ったらしくって、でも友人の住んでる家はペットが禁止なのよ。それで、私が飼うことになったのよ。(みどり)に相談しなくてごめんなさいね。あなたならこの子がきても大丈夫だと思ったから。世話はよろしくね」 少女(みどり)はこの家に来る経緯を聞きたかった訳ではなく、この生き物の正体を知りたかったのだが。まあ母親曰くはこの生き物は猫らしい。 少女(みどり)はこの生き物の世話という面倒くさい仕事を任されることになった。 「お母様は何故この子を飼うことにしたのですか?」 少し考えてから母親はこういった。 「私が仕事でもあなたが寂しくならないようにね」 この母親が少女(みどり)がいつも一人でも寂しいと思うわけがない。だって少女(みどり)は知っているのだ。母は仕事と言って毎晩男と遊び歩いていることを。自分(みどり)を邪魔だと思っていることを。 何故この生物を母親が飼おうと思ったのだってなんとなくわかる。 どうせSNSのためだろう…自分(みどり)だってそうだ。子供とペットはいい数字を稼げるんだろうと少女(みどり)は幼い頃から全てわかっていた。 少女(みどり)の考えはすべてあたっていた。 「じゃあ。私は仕事に行ってくるからあとはよろしくね」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!