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3歳下の義弟が出来たのは、私が8歳になり第一王子との婚約が調ったあとのことである。
私の嫁入りが決まったため、家を継ぐ者として縁者から優秀な子が選ばれたとかなんとか。
そして私はそんな義弟、ユーベルト推しの転生者である。
なんで!ヒロインに転生しなかった…!
そしたらユーベルトを攻略してキャッキャウフフな薔薇色ランデブーを過ごせたのに…!
ユーベルトを紹介されて記憶が前世の記憶がにゅるっと出てきて、ユーベルトに萌えてゲームを何十周もしグッズを買い漁り、イベントに遠征した日々を思い出した。
私はユーベルトルートの際に出てくる義姉である。
それ以上でも以下でもない。
何故ならユーベルトの義姉は存在をちらっと描かれるだけで特に断罪があるとか大きな活躍もないからだ。
活躍も出番もないのは寂しいけど、断罪もないなら義姉という立場を利用してユーベルトを心のままに愛でましょう!
8歳の私はそう心に決め、突然出来た義弟の立派なブラコンになった。
ユーベルトと結婚出来ないならば、せめて引かれる覚悟で可愛がるのみ!!
ユーベルトのことならすべて暗記済み。
好かれるくらい頑張ればなんとかなる!
見ててねユーベルト!私は最高のお義姉様になって「結婚するなら義姉さんが良かったな」とか言わせてみせたい!!言われたい!!ちょっと照れた顔で!はにかんでユーベルト!!!
ぐっと握り拳を掲げて対ユーベルトへの想いを決めた。
そして私のユーベルトへの好感度上げが始まった。
ユーベルトの好物から趣味は把握済みに加え、選択肢から考察される諸々でユーベルトに対して最高だと思える言動をいつもしてきた。
おかげでユーベルトは私を優しくて立派な義姉だと思ってくれている。はず!!
だってさ~私の婚約者の第一王子に対してバリバリの対抗意識あったり「姉さんが好きな花ですよね」なんて隣国の花を取り寄せてくれたり社交界デビューしたあとのエスコートは第一王子が相手ではない時は譲らないし。
これはもうユーベルト、完全にシスコンだな…やったね!
ここまで立派なシスコンならヒロインが出てきても蔑ろにはされないはず!多分!きっと!信じてるわユーベルト!!
今更蔑ろにされたらブラコンを公言している私は死ぬ。生きたい。
とか思ってたら第一王子をヒロインに攻略されました。
王城に呼び出され秘密裏に国王様と后様、お父様とお母様に第一王子とヒロインがいらして穏便に白紙撤回されました。
ヒロインが転生者匂わせ言動をしていましたが、お気になさらずに。
王命で婚約していただけで第一王子に恋愛感情はなく、私はユーベルト一筋ですから。
それからのユーベルトは少しおかしかった。
いえ、おかしいというかいつもの姉弟の域を(普段から越えてる気はしていましたが)充分越えている。
そして、ユーベルトの言動に既視感があった。
わー。これ知ってるー。隠しルートの悪役令嬢友情ルートでのやりとりだー。
いや、友情ルートより過激な発言が飛び出すことも多い。
義弟と友情と言うには婚約者相手にする言動では?と疑問を持ちながらつい素直に従ってしまう。
だってユーベルト推しだったんだもん…!
推しは推せる時に推させてくれ…!
そして今の私はフリー。
つまり!ユーベルトを婿入りさせることも可能!!ひゃっほい!!
ユーベルトも私のこと嫌いじゃないみたいだし、このまま押せばもしかしてもしかすると?
などと夢見心地でユーベルトにエスコートされ、ダンスを踊っていたりこの世の春を噛み締めていた。
しかし、ユーベルトが最近よそよそしい。
さすがに義理とはいえ姉にべったりが恥ずかしいお年頃になったの?ユーベルト。かわいいね。
でも避けられたら悲しいわ。
「ユーベルト、ユーベルトは私のことが嫌いなの?」
自宅の中庭にて、ティータイムを共に過ごしながら近頃のユーベルトに言及し悲し気に尋ねる。
ユーベルトは困った顔をして「そんなことはないです」と頭を振った。
「ただ…」
「なにかしら?」
「悪役令嬢恋愛ルートがあったら教えてほしいです」
ユーベルトが小さく呟いたのをユーベルトセンサー掲載の私は聞き逃さなかった。
ブルータス、お前もか。
義弟も転生者と知り、白目を剥きかけたが令嬢のど根性で耐えた。私えらい。
「なにかしら?ユーベルト。聞こえなかったわ」
もう一度聞きたい。これは間違いなくユーベルトは私を攻略しようとしている!
「ユーベルトはわたくしのことがすきなの?」
ユーベルトを攻略していたように、ユーベルトも私を攻略しようとしていたらしい。
やだそれ相思相愛!?
「どうなの?ユーベルト」
「義姉さんは時々ひどくいじわるですね」
出たーーー!!!めっちゃ好きでお高いアクリルパネルまで買ったスチルと同じはにかみ笑顔ーーー!!!イエス!ユーベルト!!!
「義姉さんが転生者だとは薄々気付いていて、僕の好きな作品の悪役令嬢だとは違うと分かっていてもあなたがすきです。王子との婚約も白紙撤回されましたし、もしよろしければ僕が婿入りすることは可能でしょうか。もうお義父さんには話をしてあるのですが…」
転生者ってバレてたー!でも私が好きってー!しかも手回しがいいーーー!!
情報量が多い!!でもさすがは私のユーベルト!顔がいいからすべて許す!!
「分かりましたわ!!ユーベルト!!結婚いたしましょう!!」
「気が早い!でも、とても嬉しいです」
ユーベルトが好きすぎてつらい………なんでスクショ撮れない…今の顔、収めたかった。文明発達して………。
こうして私はユーベルトに攻略されてしまった。
でも幸せなので一生拝み倒し攻略し、私もユーベルトに攻略され続けたいです。
転生して良かったーーー!!
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