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22.だから、結婚しないって言ってるでしょ。
「この人、本能寺タケルに刺されました。明確な殺意があったかと思います」
私はすかさず警察に説明した。
「七海、ふざけんなよ。お前、夫が犯罪者になっても良いのかよ」
「だから、結婚しないって言ってるでしょ」
タケルはこの後に及んで私が彼と結婚すると思っている。
私が今まで彼を甘やかし続けたからかもしれない。
「七海、お前、もう30歳なんだから、俺を逃したら次はないぞ」
「結婚なんてしなくても、私には手に職がありますから」
私は憧れの異世界でもやはり助産師として赤ちゃんを取り出していた事を思い出した。
それにしてもレオナルドは、タケルそっくりだった。
異世界でもダメ男沼にハマり抜け出せなくなっていた自分に思わず笑ってしまう。
「あの事情をお聞かせ願えますか」
警察が私に話し掛けて来たところを、仙崎さんが制した。
「彼女は怪我をしているので、事情聴取は後日お願いできますか? 私は医師で彼女を病院に連れて行きます。一部始終は彼が見ていたので、彼に聞いてください」
仙崎さんが手を翳した方に、黒髪で少し神経質そうな男性がいて立ち上がった。
「弁護士の前田です。私が対応致します」
どうやら彼は仙崎さんと一緒に食事をしていた相手のようだ。
私は仙崎さんに連れられ、レストランを出た。
後ろから私の名前を必死に呼ぶタケルの声がしたが、振り向かなかった。
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