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23.勇気を出して、踏み出してみよう⋯⋯。
タクシーに乗り、病院に向かう。
「仙崎さん、先程の方にプロポーズをする予定とかあったんじゃ⋯⋯」
私の言葉に仙崎さんが吹き出す。
「な、ないよ。男同士だからね⋯⋯久しぶりに会って食事していただけだから」
私は、自分がBLも嗜む事がバレてしまったようで赤面した。
リッチな方は久しぶりの食事でも三ツ星レストランを使うらしい。
「やっぱり、面白いな。鈴木さん⋯⋯。祖父からよく君の話を聞いてるんだ。もっと君の話が聞きたいな、今度は君の口から⋯⋯」
真っ直ぐ、私を見てくる仙崎さんにアッサム王子が重なった。
(そうだ⋯⋯私は本当はアッサム王子に惹かれていた。私の話を聞きたいと言ってくれた彼に⋯⋯)
そういえば、産科のおじいちゃん先生の名前が仙崎だ。
上品な感じが彼と似ている。
1度彼が高級煎餅を産科に持って来てくれた事を思い出した。
「煎餅を持って来てくれましたね。王子⋯⋯」
私の呟きに「食べてくれましたか? 姫⋯⋯」と仙崎さんが返してくる。
「す、すみません。仙崎さんがあまりにかっこよく王子に見えました」
オタクの呟きに付き合わせてしまい私は居た堪れなくなってしまった。
「あの、傷も浅いですし、救急外来に掛かる程ではないかと」
「今、自分の事より病院の忙しさを気にしたでしょ。診断書は後日書くとして、今日は俺の家で手当しようか? 全然、食べてなかったみたいだし、
お腹も空いたでしょ」
私の考えが見抜かれてしまっていて、恥ずかしい。
「え、家?」
恋の始まりのようなものを期待してしまい、私はそのまま仙崎さんの家にお邪魔してしまった。
(勇気を出して、踏み出してみよう⋯⋯)
1年後、私と彼が結婚することになるのはファンタジーではない、本当のお話。
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