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「猫を飼うのがダメなら、お前が猫になるってのはどうだ?」
「僕が猫ですか?」
「あのー先輩、僕人間ですよ。急に猫になるって先輩、魔法でも使えるんですか?」
魔法使いなんてファンタジーの世界にしか存在しないとは思うけれど、豊富な知識量と圧倒的な大喜利力を持つ先輩ならば、魔法の1つや2つ使えてもおかしくない。まさか、その魔法で僕を猫にするつもりなのか。
「使えないぞ!」
「ほんとに猫になれって意味では言ってない」
「……と言いますと?」
「だから……」
「ニャニャ、ニャニャニャーニャ」
「こんな感じで、喧嘩を売られたなと思ったら猫語で返せばいいんだよ。喧嘩を売られたときに、喧嘩を買って、お前も奥さんが怒るような言い方で返すから、喧嘩になるんだろ?」
「猫語で返せば奥さんも癒され、喧嘩する気にならなくなるんじゃないか? ようは、火が上がった瞬間にすぐに消してしまえば火事にはからないってわけよ」
「なるほど、僕が猫語を……」
「可愛がられることには自信があるんだろ?」
「はい。今まで可愛がられて生きてきましたけど」
「大丈夫だ。自分でそこまで言えるんであれば、問題ない」
「ニャ、ニャニャニャニー!」
「え?」
「な、なるほどって言ったんですよ」
「あれ、今イラッとしませんでした?」
「してない。聞き取れなかったから聞き返しただけだ」
「ニャニャニャニャーニニニニャニャニャ」
先輩のアドバイスにより、僕は猫になることになった。あの先輩のアドバイスだから間違いないとは思うけれど、妻ってねずみ年なんだよな。猫とねずみって仲悪くなかったっけ?
「お前が猫になって、夫婦喧嘩を食べちゃえばいい」
間違えて、ねずみ年の妻まで食べちゃわなければいいけど。こう見えても僕は大食いだから。
※
「そろそろ帰るか?」
「俺は、一人もんだからな、代金は俺に任せとけ」
「ニャニャニャーニャニャニニャス」
「それは、ちゃんと言えよな」
「すんません。ありがとうございます」
タクシー代まで、先輩に出してもらい家に帰ることにした。 こっちから誘ったのに、飲み代だけではなく、タクシー代まで出してもらえる。僕の可愛がられ力が発揮された。
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