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僕達は大学が別々になったり、喧嘩する日もあったり、会える日が月に一回になる事も多くなったけど、別れ話になることはなかった。
社会人になって自立できるようになると、どちらからともなく「一緒に暮らそうか」という話を持ちかけた。
初めての同棲。二人でマンションに赴き部屋のドアを開けた瞬間、これからの生活を祝うようにキスを交わした。
二人の生活が始まると、お互いの心と体を案ずるようになった。この時『愛』を知った。
『恋』は自分が焦がれるもの、『愛』は相手に与えるものだということに気づいた。
いい大人になってから、初めて『恋愛』という言葉の本当の意味を理解した。
そのうちキスは習慣的なものになっていった。
「おはよう」のキス。
「いってらっしゃい」のキス。
「おやすみ」のキス。
それは『恋愛』を確かめ合うための儀式だったのかもしれない。
そこから当たり前のように結婚をした。正直結婚式の時は準備が慌ただしく、どんなキスをしたのか覚えていない。
まもなくして子供が生まれ、僕達の愛は子供に向けられるようになった。
子供が大きくなると、恥ずかしくてキスなどできなくなっていた。
『恋』はなくなり『愛』だけが残った。
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