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「キスをして」君はそう言った。
そういえば初めて君とキスをしたのは、いつの事だろう。
高校入学式の日、キラキラと花火のように煌めく瞳で校門に向かう君を見かけ、一目惚れをした。
それからは君の姿を探す日々が続いた。
二年生になり同じクラスで君に出会い、僕は驚いて目を剥いてしまった。
慌てた様子の僕を見て、君は大笑いしていたね。君は知っていたんだね、僕が君を追い続けていたことを。
初めてデートに誘った。建前はありきたりだけど、新作映画の鑑賞だ。
震える手でチケットを差し出した時、君も緊張した面持ちだった事を覚えている。
心を決めたように「ありがとう」と言ってくれた時、僕は覚悟を決めた。
映画鑑賞の後、横浜の光彩が煌めく橋の上で僕は告白した。
「ずっと好きでした」と。
君はそれに答えるでもなく、もじもじしながらただ一言、「キスをして」と呟いた。
柔らかくほのかに暖かい唇に触れた瞬間は今も覚えている。
あの時、初めて『恋』を実感した。
それからは学校の帰り道、人気のない場所を探して毎日キスをしていたね。
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