キスをして

1/3
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「キスをして」君はそう言った。  そういえば初めて君とキスをしたのは、いつの事だろう。  高校入学式の日、キラキラと花火のように煌めく瞳で校門に向かう君を見かけ、一目惚れをした。  それからは君の姿を探す日々が続いた。  二年生になり同じクラスで君に出会い、僕は驚いて目を剥いてしまった。  慌てた様子の僕を見て、君は大笑いしていたね。君は知っていたんだね、僕が君を追い続けていたことを。    初めてデートに誘った。建前はありきたりだけど、新作映画の鑑賞だ。  震える手でチケットを差し出した時、君も緊張した面持ちだった事を覚えている。  心を決めたように「ありがとう」と言ってくれた時、僕は覚悟を決めた。  映画鑑賞の後、横浜の光彩が煌めく橋の上で僕は告白した。 「ずっと好きでした」と。  君はそれに答えるでもなく、もじもじしながらただ一言、「キスをして」と呟いた。  柔らかくほのかに暖かい唇に触れた瞬間は今も覚えている。  あの時、初めて『恋』を実感した。  それからは学校の帰り道、人気のない場所を探して毎日キスをしていたね。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!