結婚

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恵奈は、難なくヘルパーの資格を取り、直ぐに介護施設 【本郷、海の里】で、働き始めた。 毎朝、学校へ通う千波を乗せて本郷まで行き、自分も、そのまま職場へ行く。 帰りも、千波が遅い時は、恵奈が待ち、恵奈が遅い時は 千波は、施設まで行って、恵奈の仕事が終わるまで待つ。 「こんにちは、施設長さん」「千波ちゃん、もう学校、終わったの?」 玄関先の草取りをしながら、高田が言う。 「うん、今日は、午後は一時間で終わったんだ、私も、待っている間 草取りの、お手伝いしても良い?」 「良いとも、手が足りなくてな~助かるよ」高田は、大喜びで手伝って貰う。 施設で働いている職員は、殆ど本郷の町の人なので 全員、達彦の事は知っていて「大変な、従弟を持ったわね~」と 恵奈を慰める「本当に、しょうの無い再従弟です、今も行方不明で」 恵奈は、自分からそう話し、最後は、笑い話にしてしまう。 「垂らしの達と、再従弟だからって、千波ちゃん、学校で虐められてない?」 真っ先に友達になってくれた、忍が聞く。 達彦は、皆の間では、垂らしの達と、呼ばれていた。 「今の所は、学校へ行くのは嫌がっていないけど、、」 「そう、良かった、恵奈さんの妹だけ有って、強いんだね」 「鉄の女じゃ無くて、鉄の姉妹だね」「あはは」聞いている皆も笑う。 こんな風に、職場の仲間とも、良い付き合いが出来、入所者さんからも 「恵奈さんは、優しいから好き」「恵奈さんに、して貰いたい」 と、年寄の扱いには、慣れている恵奈は、評判が良かった。 「私が、見込んだだけ有るよ」と、高田も、にこにこ顔で言う。 恵奈を待つ、千波も、すっかり施設の人達と仲良くなって 催し物が有ると、ポスターを作ってやったり 飾りに使う、花や星等を作ってやったり、案内状のイラストを描いたりして 「やっぱり、若者のセンスは良いね~」等と、重宝がられていた。 「何しろ、人手が足りなくてな~」高田は、口癖になった言葉で そんな千波に、お礼を言う。 「いいえ、施設長さんのお役に立てて、私も嬉しいです」 千波は、にっこり笑って言う。 「恵奈が戻って来てからは、千波が、元気になったな~」 「ああ、やっぱり親子じゃ、恵奈も、張り切って仕事しておる」 鶴と亀は、そう言った後「じゃが、達彦は、、」「ああ、またじゃ」 達彦は、一緒に逃げていた女工と別れ、隣町で、後家さんの家に転がり込み 紐みたいな、生活をしている事が、分かったばかりだった。 「いつになったら、落ち着くのやら」二人は、深いため息をつく。 「正月には、戻るかのぅ~」亀が、そう言うと 「戻らんじゃろ、今までも、正月に居った事は無い」鶴が、きっぱりと言う。
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