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「やっぱり、籍を入れた位じゃ、彼奴の女癖の悪さは、治らんのか
すまんな~恵奈」亀と鶴は、恵奈に謝る。
「まぁ、よっぽどの事が無い限り、彼奴の病気は、治らんな~」
恵奈も、そう言ったが、そんな事より、達彦と結婚した事で
千波との仲が、ぎくしゃくしている方が、気になっていた。
毎日の登下校の時も、今までの様に話し掛けて呉れず
何か、考えこんでいる様だった。
三年生になったので、入試の心配かと思ったが
ここらの子が行く、本郷高校は、定員割れする位、生徒が少ないので
テスト用紙に、名前さえ書けば、誰でも入学できると言う、噂が立っていた。
千波も、勉強はせず、夏休みには、魚の加工のアルバイトに、精出していた。
その夏休みも終わった、秋になって、ふらりと達彦が帰って来て
亀婆は、大喜びした。
その夜、達彦は恵奈に「結婚したって、俺は、お前なんか抱く気は無い」
と、恵奈に宣言した。
「男が、いったん、うんと言って籍を入れたんだぞ。
私と、関係を持たなくて良いから、女遊びだけは、いい加減やめて
亀婆を、安心させてやれ、このままじゃ、千波の就職や、結婚にも響くだろ」と、恵奈は言った。
「千波の就職?結婚?まだまだ、先だろうが」
「何を言ってる、高校の三年間なんか、あっという間だぞ」
「そうかよ」達彦は、プイッと庭に出て、煙草を吸う。
鶴も亀も喘息が有るので、煙草は絶対、外で吸えと
昔から、恵奈に、きつく言われていたからだ。
達彦が帰って来た事で、千波の機嫌は、更に悪くなった。
千波、お前の為なんだよ、分かっておくれ、恵奈は、心の中で言う。
関係は、持たないが、形だけは、夫婦なので
恵奈は、亀の家で寝る様になった。
それでも、ご飯は、二家族分作り、鶴の家で、一緒に食べる。
だが、達彦がいる時は、千波は、ご飯も食べず、そのまま登校する。
帰りも、今まで通り、恵奈の仕事が終わるまで、施設で待っていて
極力、達彦と、顔を合わせない様にしていた。
「そこまで、達彦を嫌っているのか」と、恵奈に鶴が聞く。
「傷つきやすい年頃だからね~達彦の所為で、学校でも浮いた存在で
辛そうだったし」恵奈は、学校での事を話す。
「そうか、全く、困った奴だよ、皆に迷惑をかけて、、」鶴は、溜息をつく。
もう、船を出す仕事も、恵奈が居るので無くなった達彦は
毎日、スナックに入り浸って、酒を飲んだり、女と遊んだりしていた。
「結婚したんだろ?嫁さん、ほっといて良いのか?」と、言われても
「な~に、結婚しても、しなくても、俺には、関係ないんだ。
いくら励んだって、子供が出来る訳でも無し」と、笑い飛ばす。
「そうだったね~あんたは、種無しだったっけ」酔ったホステスが、言う。
「そうだよ~だからさ~一緒に遊ぼうよ~」達彦は、女の腰を抱いて誘う。
「駄目駄目、恵奈さんに、怒られるよ」女は、そう言って逃げる。
「ちぇっ、これだから、本郷じゃ遊べないんだ」達彦は、舌打ちする。
「分かった~だから、いつもどこか、遠い所へ行くんだね」
「そう言う事、なぁ、三十分で良いから付き合ってよ」
「仕方ないわね~」お得意さんの達彦の機嫌を取りたい、ホステスが頷く。
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