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達彦は、高校時代に、悪い仲間三人と付き合っていて
その頃覚えた、女との遊びに、うつつを抜かしていたので
島にも帰って来なかったのだと言う。
「高校生の時ならまだしも、もう社会人なのに?」恵奈が呆れて聞くと
「それがな~」と、鶴が話し始める。
その悪い仲間二人には、遊んでいた女に子供が出来て、女の両親や
自分の両親まで巻き込む、騒動になって、結局、その女と結婚したり
子供を、降ろして貰って、慰謝料を支払ったりしたらしい。
「避妊、ちゃんとしていたんだがな~」と、しょげる二人は
「そう言えば、お前には、何で子供が出来ないんだ、避妊が旨いんだな」
と、感心する、だが達彦は「避妊?そんな物してねぇよ」と、言った。
「え~っ、じゃなんで出来ねぇんだよ、おかしいだろ?」
「まさか、種無しだったりして」と、冗談を言って、笑っていたが
達彦も、おかしいと思い、もしかしたらと
病院で調べて貰うと、やっぱり無精子だった。
医者は、気の毒そうに「子供を授かる事は、無いでしょう」と、言ったが
達彦は『やった~っ、これで、思いっきり遊べる』と、喜んだ。
それからは「幾ら遊んでも、俺は無精子だからな、子供が出来る心配は無い」
と言って、医者の診断書を見せ、女を口説いていた。
ちょっと顔立ちが良い達彦に、そう言われると、女もその気になるのか
達彦の傍には、常に女が居ると言う。
「え~~っ、島に帰って来てからも?」
「そうなんだよ、もう、何度、謝りに行った事か」
「亀婆も大変だな~」「だけどね、両親も居ない上に、子供も出来ない体で
自棄になるのも、分かるよって、あまり叱らないんだ」
「そんな甘やかし、駄目じゃん」
「ああ、もう街中が、達彦の、女癖の悪さは知っている。
普通の女は、達彦を避けて歩く始末さ」
だから、島に帰る私まで、変な目で見られていたのか、恵奈は、納得した。
子供の頃から、兄弟みたいに育ち、一つしか違わない恵奈の跡を
「待ってよ~」と、追いかけていたのに、会ったら、説教してやる。
そう思っていたが、恵奈が帰る時、達彦は、いつも居なかった。
盆と、正月くらい、遊びに行かなくっちゃと、出掛けるらしいが
「毎日が、盆と正月みたいな癖に、どうせ、女の所さ」と、鶴は言う。
達彦の事も気になるが、恵奈は、そんな事より、久しぶりに会う千波に
夢中だった、山の様に買って来た、お土産、可愛い服、千波が好きな絵本。
会えない時の分まで、甘やかし、何でもしてやる。
島に居られる間は、べったり千波と遊ぶ。
だから、また仕事に行く時は、千波は、後を追う。
「お姉ちゃん、千波も、行く~千波も、連れて行って~」と、泣きながら。
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