公然わいせつ罪

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 廊下を力強く踏み締め、玄関ドアの前で仁王立ちする女。 「おい、テメェ!そこに居るのは分かってんだ!ドアを開けろ!」  玄関ドアの向こう側では、マンションの隣人や同じ階の住民への配慮など微塵もなく、まるでの如く喚き散らす男の声が廊下に響いた。 「捜査令状は!」 「そんなモンはねぇ!」 「なら、帰れ!」 「このドア開けねぇと、鍵穴ぶち壊すぞ!」  カチャ、ガチャ。 その細い腰のホルダーから有り得ない物を取り出している音がする。 「あぁ、もう!」  そこにはニューナンブM60(警察官が装備する銃)を構えた阿呆が立っていた。まさか本気で鍵穴を撃つ気ではあるまいな、呆れて言葉も出ない。   井浦 結(いうらゆい)(52歳) 石川県警捜査一課 警部補 彫りが深く骨ばった頬、やや尖った顎、スッと通った鼻筋、黄色みがかった肌、耳は薄く小さい。 薄茶グレージュの髪は緩やかなパーマヘアでバックに流し、襟元は短く整えられている。眉は細く横に引き締まり、二重切長薄茶の瞳、唇は薄い。 細身で身長185センチ。 視力は弱く老眼もやや入り、常に赤っぽい鼈甲の細いフレームの眼鏡を着用、ベージュのトレンチコートがマストアイテムだ。 「またか」 「あんたこそ、性懲りも無く毎回、毎回」 「うるせぇ」  井浦結、名前だけ聞けば可憐な少女を連想するが中身は獰猛なドーベルマンだ。しかも口が悪い、自分勝手で横暴、人の迷惑も顧みない。 短所しか思い付かない。
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