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 ひき肉をこね、手で俵型に形成していると、左から人の気配と視線を感じた。 「ねぇ、なんか手伝えることはない?」 「うるさい」  手もとを覗き込んでくる悠李を、宗佑はその顔を見もせず言葉だけで一蹴した。とはいえ、こうして冷たくあしらったところでめげる悠李ではない。この数日でわかったことだ。 「もうすぐできるでしょ? お皿とかお箸とか並べようか?」  思わず手に力が入り、せっかくきれいに整えたハンバーグの形が崩れてしまった。わざと大きく息をつき、宗佑は悠李に言う。 「黙って座っててもらえます?」  怒られているのに、悠李は満面の笑みを浮かべた。 「やだ」  言うと思った。これ以上相手をするとさらに調子に乗るので無視を決め込むことにする。  なにも言わなくなった宗佑を見て悠李はどうするかと思ったが、シンクのふちに腰を預け、一人で勝手にしゃべり出した。 「俺の父親、けっこう仕事の忙しい人でさ」  唐突に出てきた父親というワードについ反応してしまう。ひき肉をボウルからすくい上げようとした宗佑の手が一瞬止まったのを知ってか知らずか、悠李は穏やかな口調で話を続けた。 「医療機器メーカーに勤めてて、土日もやれ営業だのなんだのって全国を飛び回るような感じでね。だからといって家族の時間をないがしろにするような人でもなくて、休みの日には俺や妹を遊びに連れていってくれた。妹がよくわがままを言う子だったんだけど、それをほとんど全部聞いちゃったりしてね。そんな父親の姿を間近で見てきたせいかなぁ、あぁ、この人今すごく無理してるな、とか、思ってることと違うことを言ってるな、とか、そういうのがなんとなくわかるようになったんだ。表面上はうまく取り繕っているんだけど、心は泣いてるのかな、とかさ」  宗佑は悠李に目を向ける。先日の秋本の話を思い出した。悠李は他人の心の機微に敏感らしい。そうなったのにはちゃんと理由があったのだ。  悠李は宗佑と視線を重ね、肩をすくめた。
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