世話焼きさんは放っておけない

９．

「ごちそうさま」
　一滴残らず宗佑の精を飲み干すと、悠李は満足げに笑い、自らの着衣を脱ぎ捨てた。
　閉められたカーテンと宗佑の隙間に入り、抱きかかえるように両腕を宗佑の背中に回す。静かに目を閉じ、宗佑の唇を求めた。
　素肌と素肌が密着する。キスをしながら、悠李は器用に宗佑と足を絡ませた。
　悠李のものが太腿に触れる。あたたかくて、どっしりとした重みを感じる。
　心臓がドキドキと鼓動した。悠李が求めてくれることを嬉しいと思っている自分に驚く。
「きれいだよ、宗佑」
　悠李の男らしい指先が、描くように、宗佑のデコルテラインをゆっくりとなぞる。それだけで背筋が粟立ち、再び竿の先が密で湿る。
「あんただって」
　よく引き締まった悠李のからだは、男の宗佑が見てもうっとりしてしまうほどの出来具合だった。余計な肉は削ぎ落とされ、かといって筋骨隆々でもない。色の白さは女性のような透明感すらあり、見ていて飽きない。つい指先で触れたくなる。
　肩、腕と順番に触り、手を握る。静かに唇を重ね合うと、悠李は微笑み、宗佑の両足を大きく左右に開かせた。
「え……？」
「大丈夫」
　動揺する宗佑の竿の先を、悠李は人差し指と中指でそっと拭った。
「力、抜いてて」
　かすめとった蜜を伸ばした悠李の中指が、宗佑の後ろの窄まりに触れた。「あっ」と宗佑が声を上げた時には、するりと中へ入っていた。
「痛(イ)っ……!?」
　激しい不快感を覚え、咄嗟に足を閉じてしまう。「ごめん」と悠李は左手で宗佑の太腿を軽くたたいた。
「力が入ると余計に痛むから」
「んなこと言われても……！」
「大丈夫。俺を信じて」
　優しく言葉をかけ、悠李はもう一度宗佑の足を開かせた。ゆっくりとすべり込んでいく右の中指が奥へ奥へと進むにつれ、宗佑は背中を仰け反らせて嬌声を上げた。
「くぅぁ、やめ……っ？」
　不意に、悠李の指の動きが止まった。一番奥まで入ったらしい。
　不思議なことに、違和感はあるものの、痛みと不快感は弱まった。肩の力がふっと抜け、代わりに安心感が込み上げてくる。
「どう、いけそう？」
　悠李が宗佑の顔色を窺う。宗佑はこくりとうなずいた。
　悠李の指がゆっくりと動き出す。指先で中をこすられる。
　背筋が粟立つ。なんだ、この感覚は――。ヒリヒリして、ピリピリして、からだの感覚がどんどん失われていく。
　怖かった。なのに、逃れたいとは思わない。悠李の指が優しく動き、窄まりの中が徐々に拓(ひら)かれていくのがわかる。
　気持ちいい。言葉にできない心地よさの中で、全身がゆっくりととろけていく。甘い毒が回って身動きが取れず、痺れるような感覚にただ身をゆだねることしかできない。
「あ……！」
「ここだね」
　あるポイントに指が触れた瞬間、閃光が走った。甘すぎる毒が骨まで染み渡って、目を開けていられない。
　中指に加え、悠李の人差し指が侵入してくる。広げられた窄まりに一瞬電撃が走ったが、ビリリときたその感覚はむしろ刺激的で、感情が高ぶる。
　悠李の指が動く。宗佑が喘ぐ。二人とも汗まみれで、大きく膨らんだものからあふれた二人分の蜜がシーツを濡らした。
「気持ちいい、宗佑？」
　条件反射的にうなずく。悠李は満足げに微笑み、ゆっくりと指を抜いた。
　いつの間にかとろんとした目をしていた宗佑の両足を持ち上げて体勢を整えると、悠李は宗佑の窄まりに竿をそっと押し当てた。
「ゆっくりいくからね」
　先端から少しずつ、宗佑の中へとすべり込ませる。皮膚が焼け、引き裂かれるような強烈な痛みが駆け抜け、目の前で火花が散った。