9.

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 嬌声がこらえきれない。どうにか口を覆い、悠李のからだにしがみついた。  後ろに激痛が、下腹部には鈍痛が走る。ずっしりと重たい、行き場を失ったなにかが腹の底に滞留しているような、猛烈な不快感。 「大丈夫?」  奥まで挿入し終えた悠李が、宗佑の額に浮かぶ玉の汗と、痛みをこらえてこぼした涙を優しく拭う。細く目を開けた宗佑がうなずくと、悠李は宗佑に口づけ、「ありがとう」と言った。  すがりつくように、宗佑は悠李の背中に腕を回す。  怖かった。男同士でやるなんて、しかも自分が、こんなにもあっさりと抱かれるなんて。  だけど、逃げたくはない。悠李の愛が、つながった場所から熱く流れ込んでくる。目を背けたくない、全部受け止められたらいいと思える愛情。 「捨てないで、おれを」  かすれた声で宗佑は言う。 「ずっと、そばにいて」  誰も信じられなかった。みんな宗佑から離れていった。  悠李はそうじゃないと信じたい。宗佑の前からいなくならないでほしい。  好きだから。  悠李に愛されることを、心の底から望んでいるから。 「じゃあ、悠李って呼んで」  要求に、要求で返される。宗佑は細く開けた目で悠李をにらんだ。 「なんで」 「いいから、呼んでよ」  物理的な意味も含めて上から物を言われ、ムッとする。が、こたえなければ許されないような気がした。彼はきっと、そういう人だ。それが悪いとも思わない。 「……悠李さん」 「悠李でいい」 「悠李」 「よくできました」  前髪をかき上げられる。まっすぐ降り注ぐ悠李の視線は、一直線に、宗佑だけに向けられている。 「見捨てないよ、絶対に。きみを愛していいのは俺だけだもん。誰にも渡したりしない」  それ以上の答えはなかった。ほしかったものが手に入った。  短くキスをした悠李がゆっくりと腰を動かし始める。下腹部の不快感が加速した。 「ば、っ……待って……!」  痛い。重い。腹が壊れてしまいそうだ。  けれど、なぜだろう。突かれるたびに、指で気持ちよくしてもらったポイントが甘い刺激で満たされていく。  はっ、はっ、と宗佑は短く息を吐き出す。毒が回り、熱に浮かされ、骨の随までとろとろにとろけていくような感覚に包まれる。  悔しいけれど、気持ちよすぎた。頭のてっぺんから足の爪の先まで、悠李の色に染め上げられる。  激しく突かれる。宗佑の嬌声。背中が仰け反り、腰が浮く。  大きく膨れ上がった宗佑のものが()ち、先端が悠李の腹に触れた。悠李に手で軽くこすられると、ぶるりと震えて一瞬で達した。  互いの腹に白い液体が飛び散る。かまうことなく、悠李は腰を動かした。  宗佑の喘ぎ声に混じり、悠李の息も弾み始める。突く力がどんどん強まり、やがて宗佑は声を失った。  火花が散り、視界がブラックアウトする。うまく呼吸できている自信がない。  ガッ、と激しく突かれ、からだが浮いた。悠李の動きがぴたりと止まる。  あたたかいものがからだに流れ込んでくる。宗佑の中で、悠李は果てた。 「宗佑」  うっすらと、名前を呼ぶ悠李の声が聞こえる。優しいキスで、唇をふさがれる。  途切れそうになる意識の中で、宗佑は大きな幸福をかみしめた。  悠李がいれば、それでいいと思えた。
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