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そう言えば思い当たる節はある。
専業主婦であるはずの千佳が、家を空けていることが最近何度かあったのだ。
「そうなんだな? 正直に言ってくれよ。俺のほかに好きな男がいるんだろう?」
千佳は小さくうなずく。
「誰だ、その相手っていうのは?」
「正文さんよ」
「……あいつ……なのか」
正文とは、俺の親友である。
大学時代にできた友人で、今でもときどき仕事の悩みの相談に乗ってもらうことがあった。
あいつもすでに既婚者で、俺たち夫婦とも家族ぐるみと言っていい付き合いをしていたのだが。
「そんな……君が正文のことを好きだなんて……」
「好きというだけじゃなくて、もうすでに何度かデートもしてるわ。あなたの親友と隠れて浮気をしていたことは謝ります。でも私は正文さんのことを心から愛してしまったの。彼と一緒になりたいから、悪いけど私と離婚してください」
「いつの間に……」
「以前、正文さんのお宅でパーティーをしたでしょう。あのとき、彼から告白されて、こっそり付き合うようになったのよ」
たしかに去年のクリスマス、俺と千佳は正文が開いたホームパーティーに出席したのだ。
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