自分に正直に

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 千佳はしきりに、正文の妻である朋美さんが作った手料理を褒めていた。  まさか、あのパーティーでそんなことがあったとは……。 「さあ、早くその書類にサインしてください。正文さんも今頃、朋美さんに離婚を切り出しているはずよ」 「何だって。俺の知らない間に、そんなに話が進んでるのか」 「ええ、そうよ」  千佳はテーブルの上の離婚届をつまみ上げ、俺の眼前に突きつける。 「もう、あなたには選択の余地はないのよ。私は自分の気持ちに正直になろうって決めたから」  千佳は大人しい性格だけれど、一方で頑固なところもある。  どうやら俺がこれ以上、何か言っても気持ちを変えることはできそうもない。  俺は言われた通り、離婚届にサインし、判を押した。  あれから半年が経った。  妻の千佳は……いや、元妻の千佳は俺との離婚後、すぐに正文と再婚したのだと人づてに聞いた。  もちろん俺は独身生活に戻ったわけだが、独り身の生活は長くはなかった。  実は俺も、あのあと間もなく再婚したからだ。  相手は、正文の妻だった朋美である。  本当のことを言うと、彼女と俺も以前から浮気の関係にあったのだ。
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