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10.コーヒーとサンドイッチ
「お母さん、おはよう。今日はお父さんが朝ごはん作ってるの?」
起き出してきた千夏がすぐに台所の透に気づく。
「そうよ。今朝はお父さん特製の朝ごはんだって」
和子の言葉を聞いた千夏が嬉しそうな声ではしゃぎだす。台所の透はそんな千夏の姿に微笑み返す。
「千夏たちにはホットミルクを作ってあげよう」
はしゃぐ千夏の声に学ぶも起き出してきて、今度は二人ではしゃぎだす。そうしているうちに、透が四人分の朝食を食卓に並べた。
「どう?」
サンドイッチとコーヒーを口にした和子の顔を透がのぞき込む。
「はっきり言って想像以上ね。今までこんなに美味しいサンドイッチ食べたことないし、こんなに美味しいコーヒー飲んだことない」
和子のお世辞ではない言葉に、千夏も学もサンドイッチもホットミルクも美味しいと透に告げる。お父さんって料理が上手いんだね、と笑う千夏と学。それは透だけじゃなく、和子もまたひさびさに目にした子どもたちの弾けるような笑顔。
「ねえ、喫茶店の話だけど、もう一度考えてくれないかな」
透が和子に告げた。和子はため息をつき、透に告げる。
「こんな単純なことで私が喫茶店をやっていいって言うと思う?」
そう透に告げる和子の顔は、このあいだみたいに怒ってはいない。
「ねえ、お父さん。今日は一緒に遊んでくれる?」
そのとき、学が心配そうな顔で透にたずねた。
「もちろん、今まで遊んであげられなかったからね。今日は一日中遊べるぞ」
その言葉に千夏も学もますます大喜び。嬉しさのあまり歓声を上げる子どもたちを和子は注意する。
「朝ごはんを食べてるのに、そんなにはしゃがないの」
その言葉に子どもたちはおとなしくなるが、嬉しさがあふれた顔。
「今日のおやつはお父さんがホットケーキを焼いてあげるからな。それまでうんとお腹空かせておけよ」
そんな透の言葉にふたたび満面の笑みを浮かべて大喜びの声を上げる千夏と学。こんなに食卓がにぎやかなのはいつぶりだろう。
そして和子は思う。透の夢を応援してもいいかもしれないと。
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