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 翌日の放課後。  ズル道の入り口に集められたのは、マリさん、伊織さん、柿谷くん。幽霊部からはオワリちゃんとわたし。今回もひとりくんは彼女との約束があるそうで欠席だった。なんだかんだひとりくんは高校生活をいちばん満喫しているひとなのかもしれない。 「事件の全容が分かったのでみなさんにお集まりいただきました」  柿谷くんへの検証がなんなのか考えていたせいで寝不足だったわたしの事情に関係なく、オワリちゃんの説明が始まった。 「今回の事件にはポイントとなる四つの謎がある。重要度の低い順から解決していこう」  言って、オワリちゃんがズル道を指差した。 「ひとつ目。ズル道に結界を張ったのは誰か?」 「それがいちばん重要なんじゃないの?」 「いや、それがいちばんどうでもいい。結界を張った人間なんてどこにもいなかったんだ」 「まさか『野良の結界』だったの?」  マリさんが当たり前のように『野良の結界』という言葉を使ったことに驚く。力があるだけじゃなくてオワリちゃんと同じ知識も持っているのだろうか? 「あの、『野良の結界』っていうのは?」  当然の疑問を抱く伊織さんに、先日の現場検証でわたしにしたのとおなじ分かりにくい説明をオワリちゃんがしていく。 「は、はあ……?」  当然ながら理解できていない伊織さんを見かねてか、 「例をあげるとすると『心霊スポット』なんかがそうね」  と、マリさんが説明を継いだ。 「訪れた人間が発する『幽霊が出るかもしれない』という感情が蓄積していって『幽霊が出るかもしれないという感覚が増幅される結界』が張られているってことね。出るって言われている場所って異常に怖いでしょう。本当に幽霊が出るかどうかとはべつの現象なの」 「なんとなく分かりました。こういうことにも詳しかったんですね」  伊織さんに改めて尊敬のまなざしを向けられたマリさんがハッとして、 「た、たまたま本で読んだだけよ。わたしは信じてないけどね」  と、「信じてない」という部分を強調して言った。本当に力を持っていることを隠していたいらしい。 「そしてふたつ目の謎が『ズル道を頻繁に使っている柿谷翔人にはなぜルールが発動しないのか?』だ」  そんなことにはお構いなしにオワリちゃんが話を再開する。 「これはみっつ目の『ズル道の結界はなぜ木原伊織にルールを発動させたのか?』と合わせて『結界の発動条件はなにか?』というひとつにまとめることができる」  わたしには発動条件がなんなのかさっぱり分からないから、オワリちゃんがふたりへの聞き込みだけで解明できたのが未だに信じられない。 「話を聞く限り伊織ちゃんが発動条件を満たす特殊な行動を起こしたとは考えにくかったから、べつの視点に立って事件を考え直してみた」  そもそもの前提が間違っていたってこと? うーん、ぜんぜん分からない。 「まず『野良の結界』はとても力の弱い結界だ。それを考慮すると疑問が生まれる。『発動条件を満たした者に四時間の遅延をもたらす』なんていう強力なルールをなぜこの『野良の結界』がもっていたのか?」  もったいぶったオワリちゃんが、ひとひとりを舐めるように見ていく。 「この謎を解くヒントは師匠への聞き込みで判明しました。師匠は伊織ちゃんが遅刻をした次の日にズル道を使ったのに遅刻をしてしまった。これがヒントです」 「どういうことなのか分からないわ。もったいぶらずに教えてちょうだい」  オワリちゃんの遠回しな説明にマリさんがついに痺れを切らす。
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