1:傷物Ω

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1:傷物Ω

 ヒートの薬を取り上げて無理やり犯して首輪まで破壊して番にしたくせに。 「お前つまんねぇわ」  そう言われて勝手に解消された。  ソイツは今ものうのうと学校に来て相変わらず友人に囲まれて充実した毎日を過ごしている。  何でソイツがそんな事したのか教えてくれない。 「何かしたかよ?」  そいつに解消された時に何故そんなことをするのか聞いたけれど 「興味本意」  と、言われただけだった。  それだけで無理やり番にして解消させられて苦しめられるなんてあんまりだ。  きっと誰かに相談しても「お前が誘ったんだろ?」と、しか言われない。  何を言ってもきっと皆、あいつの事を信じるんだろうな。  これから一生この身体と付き合わなきゃならないのだろうか。 「こんな身体      大っ嫌いだ······」  何でΩなんかに生まれてきたのだろうか。  何でこんな性別なんてあるのだろうか。  何でΩだけがこんな目にあわなきゃならない。  Ωの被害者の会の様なものもあるけれど「傷の舐め合い」「自分達のヒート管理が出来てなかったのが悪い」等と揶揄される。 「···········」  こんな身体なら死んだ方がマシかもしれない。  フラフラと路頭に迷いながらそんな事を考えていた時に誰かに話しかけられた。 「こんな所で制服のまま歩くと補導されるぞ」 「····ぁ?」  甘い香水に高そうなスーツを着て綺麗な金髪のホストが目の前に映る。 「·····見る限り如何にも死にそうな顔してっけどどうした?」 「·····別に」  アンタに関係ないだろ?  そう言いたかったけど喉からその言葉が出てくることは無かった。  そのホストに「大丈夫です」と、答えてその場から逃げるように立ち去った。 「·········」  そのホストは少年の後ろ姿をじっと見ていた。  血の気の引いた白い肌にボサボサの無造作に伸びた黒髪。生気のない瞳は死に場所を求めているようだった。  それと同時に今にも消え入りそうなその姿に心臓が跳ねた。  心が高揚し嗜虐心が燻られたのは間違いない。 「【(そら)】ー!おまたせ」  後ろから可愛らしい女性がホストの背中に抱きつく。女性に振り向き彼は笑いながら頭を撫でた。 「飯、食いに行こうぜ」
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