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65.ブルーダイヤモンド
昊と出会ってもうすぐ一年が経とうとしている。
「あっという間だったなぁ」
まだ一年にも満たしていないのに濃ゆい日常を送ったと思う。
隣で寝ている己の番の髪を優しくかき揚げて
あどけない寝顔を見ながら頬を緩ませる。
何となく始めたホストをやって
売り上げ向上のために客と枕を交わしていい酒飲んで
同僚達と飲み明かす日常も確かに悪くはなかった。
けれど、あの時如何にも死んだ様な目をした洋と関わってから周りの見る景色が変わった。
こんな繁華街に男子高校生がいるなんて補導してくれと言っているもんだと思って話しかけたのが全ての始まりだった。
二回目の時はヒートに当てられて「何でこいつ薬飲んでないんだ」と、腹が立つ反面、あまりにも自分好みの香りに当てられて不本意ながらに関係を持ってしまった。
「薬は飲んはず」の洋の首には傷の入った噛み跡があるのにヒートにあてられて疑問に思った。
それがまさかの【運命の番】とやらではないのかと思った。
ラットを引き起こされて身体の相性も今まで関係を作ってきたΩが霞むくらい合っていた。
日に日に惹かれていって最終的に傷ものになったΩに惚れたのは昊の方。
己の番に手を出す奴はどんな事をしても潰さなければ気が済まない。
自分がこんなに子供じみた独占欲の強い生き物だとは思わなかったと昊は思った。
結婚となるのはまだ先だけど
ベッドから降りてベッドの横のキャビネットの中にあるそれを取り出し箱を眺める。
「····付けてくれるかな?」
渡すなら初めて出会った日に渡したいなとスマホのカレンダーを確認した。
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三年生に上がり、暫く経ってからのある日の昼下がりの学校の休み時間の事である。
「篠ッチ結婚したの?」
「まだしてねぇよ」
まだっと言う事はその予定があると言うことだ。
左手の薬指にはめられた小さなブルーダイヤモンドが埋め込まれたシンプルな指輪。
「何?篠原結婚すんの?」
後ろから担任が洋の指輪を覗いてきた。
「まだです」
「ふーん。式には呼んでね」
気さく過ぎる洋の担任教師は話を続ける。
「ブルーダイヤの石言葉って知ってるか?」
【永遠の幸せ】【幸福を願う】。
更に花嫁が身につけると幸せになれると言われている#サムシングフォー__幸福の4つのアイテム__#の一つの#サムシングブルー__花嫁の清らかさ__#に含まれる。
「····先生」
詳しすぎて気持ち悪い。
友人の一人がそう言うとチョークスリーパーをかけられていた。
「··········」
ブルーダイヤモンドの意味を知って昊は洋にわたしたのだろうか。
昨日の指輪を貰った出来事を思い返していた。
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