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66.これからの二人【完結】
「何これ?」
手渡された箱の中身を開ければ指輪が入っていた。
「薬指にはめてみて」と言われてはめてみればピッタリだった事には驚いた。
「何で俺の指のサイズ知ってんの?」
「そこ!?」
自分ですら知らない左手の薬指のサイズを何故昊が知っているのかの疑問の方が強かった。
「そりゃあ····指のサイズ測ってたもん」
洋が寝ている時に指を触って大体のサイズを勘で覚えたと言う。
おかげでピッタリの指輪を渡せたという事だ。
「結婚したい子の指のサイズくらい把握しとくのは当然じゃね?」
じゃないと婚約指輪をサプライズで渡せないだろうと昊は言う。
流石元人気ホストと思う反面その「結婚したい子」と、言う言葉に急に顔が赤くなった。
「え···と、つまりコレは?」
「婚約指輪」
「へぇー······え?」
「いや、だから婚約指輪」
だからではない。
普通ちゃんとしたプロポーズとかあるだろうと洋が口篭りながら言えば····
「俺、洋君が結婚してくれると思ってたんだけど違うの?」
何ならゼク〇ィの雑誌を二人で買って見てたからそう思っていたと昊が悲しそうな顔で見てくる。
シッポと耳が下がった犬に見えてきた。
「·······違くねぇけど···」
指輪をくれるならもう少し雰囲気を作ってくれるものだと思っていた。
「···············」
何故か昊は感動と驚きとショックが入り交じったなんとも言えない顔をしていた。
「ごめん洋君。指輪渡すのやり直していい??」
「もういいから!」
今更やり直されても雰囲気もへったくれもない。感動どころか寧ろ滑稽に見えて笑ってしまうだろう。
「馬鹿だ」
ええ、馬鹿ですよね。
「昊さんαだよね?」
全てのαが万能だと思ってはいけないと言うのが教訓である。
「そんな馬鹿さ加減が丁度いいのかも·····」
そういうところが可愛いんだろうなとボソリと呟いた声が聞こえてしまったのか、担任と友人に「惚気けるな」と、怒られた。
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「ただいま」
「おかえり」
仕事から帰ってくる昊の為に先に帰ってきて料理を作る事が板に付いてきた
「今日のご飯何?」
「唐揚げ。焼肉のタレで味付けたやつ」
「何それ美味そう」
料理中に後ろから抱きついて来て新婚気分を味わっている昊に「油が飛ぶから離れて」と言えばしょぼくれていた。
「そう言えば母ちゃんから聞いた?」
「聞いた。カタログ役に立って良かったねって言ったら笑ってた」
二人よりも先に式をあげるカップルがいたから昊両親から送られたウェディングドレスのカタログを洋は渡していた。
「来月引っ越すから俺の荷物こっちに全部送り付けるとか行ってたよ」
「······ぇ?」
それは初耳だと昊が言った。
「住民票もここに移す手続きしとけって言われた」
つまりだ新婚生活を味わいたいからお前は将来の旦那の所に住めと、言われたらしい。
「俺は嬉しいけど····」
予定よりも一年早く一緒に住めるなんて思ってもみなかった。
「俺も思わなかった····」
今も半同棲しているのと変わらないから問題はないが、流石に突然過ぎるだろうと洋は溜息を漏らした。
「何はともあれ、来月からよろしくな」
「····ぅん」
二人で夕食をたべ風呂に入り同じ布団で寝る。
何気ない一時がただただ幸せ。
それでいい。
一緒に居るという事の大事さを毎日噛み締めて眠り明日になれば「おはよう」と、言ってくれる番がいる。
ギシリと、ベッドを鳴らして
「洋君····」
お互いに触れて
「····昊···さ·····んっ······」
唇を重ねて。
「·····はっ····」
お互いの吐息を交わし
「「愛してる」」
愛を伝える。
七十億人以上いる人口から最愛の人と出逢える確率は約0.0000000001%。
その一人に出会える事は最早運命だろう。
傷ものにされたΩは運命の番に出会ってから全ての景色が変わっていった。
色の無かった灰色の世界が鮮やかになり、色んな結び付きができて
あんなに死にたかった日々がこんなに誰かと生きたいと思う日が来るなんて思わなかった。
「洋君」
本当の番にこんなに甘やかされるなんて思わなかっただろう。
「昊さん」
お互いの手を繋いだ左手の薬指にはめられたブルーダイヤモンドの「永遠の幸せ」「幸福を願う」と言う言葉の様にこれから先も二人に幸福が訪れる事を願う。
𝑯𝑨𝑷𝑷𝒀 𝑬𝑵𝑫
※オマケあります
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