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 七瀬の家に着いて大の字に寝転がる。 「めっちゃ疲れた」 「日向はサークル参加初めてなんだよね?」 「いや、イベント自体が初めて。1人で行きにくくて、本は通販してた。今回はナナさんが申し込んだって知って、勇気出して俺もサークル参加決めたから。七瀬はよく行くのか?」 「初めての参加は中学の時かな。姉さんの売り子したのが最初」 「七瀬はそんな前から腐男子だったのか?」 「それがきっかけだよ。姉さんに連れて行かれなければ、今も何も知らないままだったかもしれない」  それならあゆちゃんに感謝だな。ナナさんという神を目覚めさせてくれたのだから。 「日向は?」 「俺は高校の時に好きな漫画をSNSで検索したら、二次創作が引っかかってそれでBLを知ったな」 「あー、検索避けされてなかったんだね。とりあえず、お疲れ様の乾杯しよ」 「そうだな」  ジュースとお菓子をローテーブルに並べ、戦利品も積み上げる。 「イベントお疲れ様!」 「カンパーイ!」  ペットボトルを合わせて喉を潤す。缶やグラスだと万が一溢して、戦利品を濡らしてしまうかもしれない。その点、蓋のあるペットボトルは安心だ。  俺も七瀬も無言で本を読み続けた。帰ったら感想を送ろう。サンプルを見て買おうと決めた本ばかりだったからか、笑えたり泣けたりキュンとしたりと、最高な本ばかりだった。  ティッシュを引き抜き、七瀬が鼻を啜る音が聞こえ、そちらに目を向ける。俺の本を見ながら、鼻の頭を赤くして目を潤ませている七瀬がいた。  俺の本でそんなになるの? 目の前で読まれるのは恥ずかしいけど、初めてリアルで反応を見られて胸が弾む。それなのに途中で本を閉じられた。 「え? つまらなかったか?」 「違う! このまま読んでると思いっきり泣きそうだから、続きは1人になった時に読む」  その言葉にホッと胸を撫で下ろす。  俺も本を読んで泣いてる姿は見られたくないし気持ちは分かる。俺の書いた話でそう思ってもらえてなんだかこそばゆい。本を出して良かった、と顔が緩む。    本を読むのに夢中すぎて、気付けば外は真っ暗。 「悪い、長居しすぎた」 「あれ? もうこんな時間? 時間経つの早いね」  本を読んでいると時間を忘れる。 「じゃあ、俺帰るな」 「日向は明日大学行く?」 「1から3限まで」 「僕は行かないから、終わったらまた家来てよ。打ち上げのやり直ししよ? 今日は本に夢中になっちゃったから」 「分かった、また明日な!」 「うん、またね!」  大量の本を鞄に詰めて、隣の自宅へ帰る。  風呂から上がるとベッドに寝転がりながら、また本を開く。寝る前に感想を送ろう。 『新刊すっごく面白かったです! キャラ同士の掛け合いが可愛すぎて悶えました。キュンキュンです。癒し本をありがとうございました』  匿名でメッセージを送れるサイトで文字を入力して送信。他にも送りたい人はいたけど、ナナさんにだけ送ったところで寝落ちしてしまった。
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