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 大学以外はずっと小説のことを考えて書き続けた。6日で3万文字以上の話を書いたのは初めてだ。  日曜日の昼過ぎに七瀬の部屋で見せ合う。  七瀬の漫画は資料として写真を撮る所から始まるR指定だった。やっぱりすごく絵が好みなんだよ。この前撮った写真を見たのか、アングルもすごくエロかったりする。でも、どう考えても逆なんだよ。  それにしてもよく6日間でこんなに描けるよな。タブレットを見ると12ページもあった。  俺の方が早く読み終わるから、七瀬が先週買った同人誌を読んで待つ。  読むの時間かかるよな。もっと短い話を書けば良かったと思うが、全然書き終わらなくてあれよあれよといつの間にか3万文字越え。  1時間を過ぎたあたりで七瀬にタブレットを返された。 「あのさ、すっごく良かった! 小さい頃からの両片思いで好きなのに関係が壊れるのが嫌で言えないみたいな。でも、やっぱりどう考えても逆。プラトニックでも日向は受け!」 「俺だって七瀬が受けは変わらないよ!」 「じゃあ、姉さんに判断してもらお」 「望むところだ!」  あゆちゃんに2つのタブレットを渡して読んでもらう。  俺と七瀬はその間、あゆちゃんの商業BLコレクションを見て待っていた。二次創作以外は初めて見るけどハマりそう。黒髪眼鏡美人受けを読んだけど、最高だとしか思わなかった。 「どっちも好き! ねぇ、自分が楽しむだけで他に見せないから、印刷して私だけのコピー本作っていい?」 「いいけど、姉さんは僕と日向どっちが受けだと思った?」  タブレットとプリンターを繋ぎ、印刷しながらあゆちゃんは答える。 「どっちも受け! 最高の百合漫画と小説をありがとう」 「百合? 俺たちBL書いたのに?」 「受け×受けは百合でしょ? それより、これを書いていた時の感情を詳しく! どんな思いで『自分×幼馴染』の話書いてたの? あんたたち、付き合ってて受け攻めで揉めてるの?」  ニヤニヤと笑うあゆちゃんに言われて、顔が一気に熱くなった。冷静になるとおかしい。いや、冷静にならなくてもおかしい。 「正気の沙汰ではなかった」 「描きたかったから描いた」  俺と七瀬が同時に答えた。  ん? 七瀬は描きたかったから描いた? 七瀬×俺を? ……どういう事?  真意を探るように七瀬へ視線を送る。こちらに顔を向けて視線が絡むとニッコリと微笑む。 「僕、日向は受けだと思ってるし、相手は僕以外ありえないと思ってる。他は地雷だから!」  身を乗り出して口を耳に寄せて、とろけそうなほど甘い声でささめく。 「僕が描いた話、あの時僕がしたかった事だって言ったらどうする?」  耳を押さえて身を引く。顔は発熱しているのではないかというほど熱い。  聞き間違いか、と思うほど七瀬は柔らかい笑顔を向けていた。 「今言った事って本当?」 「どうだろうね?」  七瀬はイタズラっ子のように満面の笑顔になる。  印刷が終わってタブレットが手元に戻った。 「この前、打ち上げしようとしてお菓子いっぱい買ってきてくれたでしょ? 食べてないから一緒に食べよ?」 「あっ、うん……」  手を引かれて七瀬の部屋に戻る。テーブルにお菓子を並べてくれた。七瀬の言葉が気になりすぎて味はよく分からなかった。
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