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昼休み明けの講義が休講になってしまった。
次の講義まで時間を持て余した俺と、友人の坂田は仕方が無いので学食の隅のテーブル席で適当に時間を潰すことにした。
俺は来週に提出期限が迫った社会学概論のレポートがあったので、早速それに取りかかることにした。この授業はおじいちゃん教授が担当しているので、いまだに手書きのレポート用紙で提出させられる。残すは結論部分のみだが、とにかく時間が掛かるのだ。
一方坂田は白紙のレポート用紙を広げたまま、足を組み椅子の背もたれに寄りかかっている。
「なあ日本昔話に出てくる良い老夫婦と、いじわるな老夫婦っているじゃん。あいつらって、性格は真反対なのに、隣同士に済んでて日々やっていけてたのかなあ」
「はあ? 何だよ急に」
坂田は時々、突然脈略も無い事を言い出すことがある。俺はレポートを書きつつ生返事を返す。
「まあ、そりゃ、ねえ…… 別に隣同士だからって互いに干渉しなくても、何とか暮らしてたんだろうな」
ちらりと横目で坂田を見ると、腕を組みながら目を瞑り、何やら真剣に考え込んでいた。
「でもさあ、昔だし現代と違ってご近所付き合いも濃かったと思うんだよ。だからさ、時々はどっちかの家に集まって鍋パーティとかもしたんじゃないかなあ」
ああ。俺はもう坂田の話が心底どうでも良くなってきて、返事もせずに適当に相づちを返す。
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