鴛鴦の憂鬱

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 ある日、鴛鴦(おしどり)の雄が窓から訪ねてきた。 「(つがい)を探しております!」 「ここは人間の相談所ですよ」と断るが、 「いいじゃないですか! いいじゃないですか!」と聞かない。   仕方がないので話を聞くことにした。   鴛鴦は最近『オシドリ夫婦』という言葉があることを知った。 「仲睦まじい夫婦を例えていうのでしょう。何とも素晴らしい。このような素敵なことがあるでしょうか!」 「そうですね」 「しかし実際の自分たちは繁殖期毎に都度パートナーを変えているのです。何たることでしょうか。これはよくない!」 「良くないですね」 「名に恥じぬよう、生涯変わらず一緒にいられる番を探してはくれませんか?」 「ここには鴛鴦のメスの方の登録がありません」 と断るが、 「いいじゃないですか。いいじゃないですか」 と聞かない。「どうか相談に乗って下さい」 「そうですね。鳥のことは鳥に聞くのがよいでしょうね」 「確かに!ではどの鳥に聞けばいいでしょうか」 「聞くところによると、コウノトリは生涯ずっと同じペアで過ごすらしいですよ」 「ほほう!ではコウノトリさんに話を聞きに行きます!」 「それがいいですね」 「コウノトリさんは子どもも運びますしね!」 「運びますしね」  そう言って鴛鴦は窓から去っていった。 「……」   窓は開けたままにしておいた。 
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