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ーーあーあ、疲れたな。
河野和真は仕事にも家庭にも疲れ果て、居酒屋通りにある公園で缶ビールを一杯ひっかけながら、ここ数年に渡る自分の人生をふり返っていた。
結婚して早10年。
義父に土下座してまで結婚し、毎日寝る間も惜しんで会話を楽しんだのが嘘のように、完全に冷えきった夫婦生活だ。
子どももできず、ペットもいない。
夫婦の会話もほとんどなく、完全にお金を渡して彼女の生活を支える機械にすぎない自分。
唯一の楽しみといえば、ソーシャルゲーム。
課金するわけじゃなくて、無料の範囲内で楽しむだけ。
だから今すぐ「一生できなくなるよ」と言われても、なんら問題ない。
子どもも好きじゃないし、ATMと化しても家の事はすべてやってくれている。
さほど問題はない。
けれど1つ気になることがある。
この最近の妻のネットショッピング癖だ。
月に10万円も20万も引き落とされ、家には大量のブランド服やバッグ、奇妙な電化製品の類まで散らかっている。
もちろんすべて僕のカードで。
「ごめん。欲しかったからつい」
ちょっと突っ込んだら、すぐに頭を下げられた。
出会いから12年経ったとはいえ、たれ目で丸顔の、自分好みの顔が、てへへ、とアニメキャラのように謝られると、ついつい許せてしまう。
とはいえ失ったお金と比較すると、やや軽すぎる謝罪ではなかろうか。
まあいい。ヒステリーを起こされても面倒だし、家のことは抜かりなくやってくれている。
今回はこれくらいにしておこう。
僕は寝室に引っ込んだ。
少なくとも当分、購買欲はおさまるはずだ。それでいい。
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