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しかしそれからも、洋子の買い物癖は悪化する一方だった。
家には物が溢れ、クレジットカードの明細を見るのは毎月地獄。
これでは将来の蓄えがどうにもならない。
しかもだ。
最近は、彼女にとって一番重要な仕事である、家事までもがおろそかになってきている。
さすがにこれには、堪忍袋の緒が切れた。
「買い物ばかりして、家事が出来てないんじゃないか」
僕は、ソファで寝転びながらスマートフォンでショッピングサイトを眺めている洋子に言った。
「やってるよ」
「どこが。最近は洗濯も畳まず放ったらかし、料理だってほとんど惣菜だ」
「それでも生きていけるじゃない」
「ネットショッピングだって、しなくても生きていけるだろ。」
「生きていけないの」
意地を張って言ったような言葉に、頭が熱くなった。
「ネットショッピングなしで本当に生きていけないのなら、それ依存性じゃないのか? 明日にでも病院に行ったほうがいい」
2割は本音、8割は嫌味のつもりだった。
「最悪。そんな言い方ある?」
「そっちが『生きていけない』っていうから、真面目に対処法として提示しただけだろう」
「この10年、ほとんど完璧に家事をやってきたでしょ。同棲期間も含めると12年。それがちょっとばかり手を抜いたからってそこまで言うことなくない?」
「そうやってすぐに感情に訴える。今はお前の買い物癖の話をしてるんだ。10年がどうとか、そんなのは関係ない。それに、オレだってこの10年手を抜かずに仕事をしてたけど?」
そう言うと洋子は何も言わずに黙り込んだ。
ーー勝った。
彼女は口論に弱いので、すぐにボロがでる。
付き合い始めたころから、ケンカは圧勝だった。
第一、生活費のほとんどを僕に牛耳られているぶん、彼女には弱点が多いのだ。
家出されても面倒なので、ここで一つフォローしておくとしよう。
「せめて自分の金でやってくれ」
それきり洋子は自分の部屋にこもった。
その日は晩御飯も出なかった。
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