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深夜0時過ぎ。
ようやく帰路についたところで、異変に気づく。
自分のアパートの周りに人だかりができているのだ。
それも一人や二人ではない。
数十人の人間がわらわらと集まって、一時すると帰っていく。
なんで。
皆が上を向いているのでそちらを向くと、アパートの一部が真っ黒に色が変わり果てている。
まるで火事でも起きたあとのように。
「は……」
しかも黒ずんで中が丸見えになっている3階の端から2番目。
あれはうちの部屋だ。
ウソだろ。そんなはずない。
信じられない、というより先に頭に浮かんだのは、洋子のことだ。
周りを見渡しても、彼女がいる様子はない。
アパートの周りに集まっている人のすべての顔を確認しながら、ポケットからスマートフォンを取り出す。
画面を見ると、数十回の着信履歴が入っていた。
そして気づく。
彼女が電話をかけてきたのはこのせいだった。
不安と恐怖で血管が張り詰め、頭で心臓を動かしているみたいに、鼓動がうるさく鳴っている。
なんであの時、出なかったんだろう。
なんであの時、マナーモードなんかに。
そんな後悔が頭の中を猛スピードでぐるぐる回りながら、何度も何度も洋子に電話をかける。
10回かけた後に、プツリと繋がった。
『もしも……』
「なんで出ないんだ!」
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