今年から

5/10
前へ
/46ページ
次へ
校門まで3人で並んで歩く。 「ま、せいぜい頑張れよ」 校門前まで来たところで、保は僕にそう言うと、イズミさんの車に乗って行った。 保に応援されるなんて、嬉しいなぁ。 後には僕と鈴木くんが残った。 「僕も山村先輩には頑張ってもらいたいです。…で、でも、キスは…」 「鈴木くん、大丈夫だよう。僕、保にキスされるの好きだもん!僕のファーストキスは、保か佐藤先輩か可愛い女の子が良かったんだー」 佐藤先輩とは、もうアメリカに行っちゃったけど、僕の1つ上の料理部の先輩だった。 名前は、佐藤吾作(さとう ごさく)さんっていうんだ。 保も鈴木くんも格好良いけど、佐藤先輩も格好良くて、僕は憧れていた。 「そ、そうですか…」 佐藤先輩って僕が言った時、鈴木くんの表情が一瞬強張ったけど、僕は気付かなかった。 「問題は言葉だよねー。僕、フランス語、話せないもん」 「あ、僕は話せます」 「ホント?!」 僕は思わず鈴木くんの顔を見上げた。 「はい。…でも、僕が居なくても、日本語を話せる現地の人達も最近、多いですし」 鈴木くんは眼鏡のツルを上げながら続けた。 「山村先輩は学園の引率で行くから、自由時間以外は心配しなくても大丈夫だと思いますよ?」 そう会話しながら2人で歩いて行くと、別れ道にまで来た。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加