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彼らは社会的な意味だけでなく、親からも子からも大人としてきちんと認められている人なのだ。社会的に大人の枠組みに入れられても、母からは子ども扱いの七瀬とは天と地ほどの差がある。
「でしょ? 子どもに『痛かったねー。もう大丈夫よー』って言える人が頑張りなさいって言われたり、子どもを転ばせている母親が悪いとか言われる世の中なのよ」
「それって、なんかおかしくない?」
お母さんが子どもを転ばせたわけじゃない。弟か妹を抱っこしたお母さんに、上の子がお兄ちゃんかお姉ちゃんらしくいい子にしてついて行った。そこでたまたま段差に躓いたのかもしれない。子どもが怪我をしてお母さんだって胸が痛むだろうに、どうしてお母さんを責めることができるのだろうか。
「おかしいのよ。だからお天道様に背くようなことはするなって言うのよ。だけど今はそんなこともくだらないとか、田舎臭いとか言われるのよね」
叔母の言葉に頷く。誰とは言わないが、くだらないとか田舎臭いと言うのは母だ。
母は目に見えないものを嫌う。神様や言い伝えなんてものは言語道断、愛情や友情もおそらく信じていない。信じているのはお金と目に見える物だ。
「そういうのをきちんと見てくれている人は、見てくれているんだし。……あら、雨だわ」
外に出ると、雨がしとしとと降り始めている。急な雨に急ぎ足で近くの建物に入る人もいれば、折り畳み傘をさして歩いている人もいる。ただでさえ東京よりも寒い仙台は雨が降りはじめたことで、より寒くなったような気分にさせられる。
「降るとは言ってたけど、予想より早いわ。今日は雨から雪になるって言ってたから、片づけは明日。美味しいもの買って帰りましょ。今夜おでんにして、明日は鍋ね」
「おでん楽しみー」
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