拾われて赦されて

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そう思っていた矢先、買い物帰りに夫を見た。 驚いたことに、若い女と楽しそうに歩いていた。 歳は30~40歳前後だろうか。 しかも彼女に対し、服やバッグをたくさん買っていた。 まさか。自分の夫に限ってそんなことが。 私は絶句した。 それでもなんとか踏みとどまった。 もしかしたら、どこかの夜の女で店に行ったらいいように騙され、尽くしているのかもしれない。 浮気にはかわりはないのかもしれないが、ストレートな浮気に比べたら、やや溜飲が下がる。 そう思ったとき、夫のスマホが目に入った。 もし女と連絡を取りあっているなら、あのスマホは証拠の塊だ。 しかも夫は今、仕事から帰宅して、入浴しているところ。 シャワーの音が聞こえているから、これから頭や体を洗って、じっくりと湯船に浸かる。 ということはまだ、スマートフォンを盗み見る時間は十分ある。 ソファーにある夫のスマートフォンに手を伸ばそうとして躊躇する。 この歳になるまで夫の口座残高を知らなかったように、今まで一度も夫のスマートフォンを勝手に開いたことはなかったからだ。 それが夫婦の暗黙の了解だった。 けれど今は違う。 そう思いきって開くと、案の定だった。 夫のスマホには知らない女とのやりとり。しかも一通や二通ではない。 もはや相手の職業は関係なかった。 夫の見たことない文章を見て、今まで耐えてきたすべてのものが崩れ落ちていく音がした。 終わりだ。 自分の頭に決別を告げる鐘が鳴り響いた。
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