拾われて赦されて

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別居生活は長く続いた。 経済的にはきついものの、慣れてしまうと夫のいない生活は楽しかった。 ご飯は自分のぶんだけ作ればいいし、洗濯も2日に1回で足りる。 興味のないテレビの声を、朝から晩まで耳に入れる必要もない。 それでも夫はたびたび私の家に来た。 何をしに来るのかしらないが、台所と冷蔵庫を確認して、少しだけ話したら帰っていく。 もちろんケンカになることもあったし、そのたび何度も何度も離婚をこうた。 けれど毎回断られた。 ーー そんなとき、私が病気になった。 最初は誰にも言わなかったが、とうとう隠すことができなくなった。 手術をするのに手術合意書に誰かのサインが必要なのだ。 親戚の誰かに頼めばよかったものの、夫がこんな近くにいるのにサインを頼まないことを怪訝に思われて、いろいろ詮索されるかと思うと気が重かった。 迷った挙げ句、たかがサインだ、そう思って夫に打ち明けた。 すると夫は病院に飛んできて、病室で私を怒鳴った。 「なんですぐに言わなかったんだ」 よくもまあそんなことを言えたものだ。 「あなただって彼女のことを私に隠していたじゃない」 「それとこれとは違うだろう。これは生き死にの問題だ」 「一緒よ」 それからも夫は何か言ってきたが、私は聞こえないふりをした。生まれて初めての手術で頭がいっぱいな上、これ以上エネルギーを消費したくなかった。 とくに夫に大しては。
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