両親とオレ

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 恋人時代、支社に帰る父を見送るため二人はよく空港まで来ていたらしい。美しき思い出は結構だが、公共の場で盛り上がるのはやめてくれ。しかも今日の主役、おれやぞ! と抗議したら、「じゃあ隼人とチューする」と母が抱きついてきた。それを父が横目で睨んでいる。何だこれ。  そんな二人を見ているうち、先ほどの罪悪感は消えていった。  うちの両親は人前でチューできるくらい若くて、互いを想い合っている。思えばおれの生まれるずっと前から、二人は『夫婦』として支え合ってきたのだ。おれがちょっといなくなるくらいで、だめになるような人たちじゃない。少し落ち込んだとしても、すぐに元気になる。なってくれるさ。  二人は、保安検査場の前までついてきた。 「次に会えるのは、ゴールデンウィークだね」  母がまた涙ぐみはじめる。 「え、そんなすぐには帰らないよ……。飛行機代高いし」 「帰ってきなさい。株主優待券を送るから」  父がそう言って、おれの肩をぽんとたたいた。  人の流れに乗ってゲートへ向かう。手荷物をカゴに乗せたところで振り返ると、二人はまだ寄り添ってこちらを見ていた。その姿が急にぼやけはじめ、おれは慌てて前を向いた。 「……ありがとう。母さん、父さん」  なんだかんだ言いつつ、ゴールデンウィークには帰省したいおれだった。
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