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1トラウマ
「うぅっ……。さむい」
肌寒さに目覚めると体のあちこちに痛みが走った。
(ここはどこだっけ? 僕は何をしてたんだろうか?)
ぼんやりとした頭で思い出そうとするが、こめかみが痛くて考えがまとまらない。周りを凝視しようとしても灯りがついてなくて何も見えない。
瞬きをしようとして初めて目の周りの布の存在に気づく。
(目隠しをされている……そうだ僕、誘拐されたんだ!)
後ろ手に縛られ椅子に拘束されているようで動けない。
声を出そうとして口の端が引きつった。そう言えば連れてこられる時に頬を殴られたんだっけ。
口の中に鉄の味がする。口を動かしたから傷口が開いたのか?
周りに人はいないようだが、声を上げるべきだろうか? いや誘拐犯が近くにいるかもしれない。逃げ出すことは出来るだろうか?
不安に思いながら身動きが取れないままでいると、こつこつと靴音が近づいてきた。目の前に人がいる気配がする。
ふいに頬がなでられビクッと身体が固まった。
(殺されるっ!)
「……ふっ」
(なんだ? 笑ったのか?)
僕の頬をなでていた暖かい手が顎の下で止まった。顔を上向きにされると唇の上に柔らかいものが押し付けられた。
「えっ??」
ちゅっという音と共に生暖かいものが僕の唇をこじ開けてきた。
それが舌だと気づいたのはしばらくたってからだ。
なんだ?どうなっている?だんだんと呼吸が苦しくなる。初めての感覚にとまどう。
視覚が遮られてるせいか感覚だけが研ぎ澄まされていく。
「はっ……んん……くっ……」
苦しい。息ができない。わずかに首を動かそうとしても身体が思うように動かない。
「ん〜んっんんっ。……っ」
息苦しさにそのまま僕は意識を手放した。
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