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こちらを伺うような視線をずっと感じる。だが敵意はないようだし、そろそろ尋ねてみてもいいだろう。俺は屋敷の外れの林まで俊足を使い、その場に潜んでる者に声をかけた。
「……ウィリアム様に御用ですか?」
咄嗟に騎士が庇うように前に出てくる。
「よい。その者と話がしたい」
「しかしっ」
「かまわぬ。下がっておれ」
騎士の後ろから姿を現したのは体格の良い美丈夫だった。
「グレンだな? 私の古い友人の弟子よ」
「師匠と友人だったのですね? ……王様」
「なんじゃバレておったのか。だがここではその名は呼んでくれるな。忍んでまいったのでな」
「了解しました」
「お前はどこまで勘づいておるのじゃ?」
「……ウィリアム様が高貴な生まれだという事だけは」
「わたしが今から話すのは単なる独り言だ」
「はい。わたしには風の音しか聞こえません」
「うむ。その昔、わたしと友人はひとりの娘に恋をした。だがな、その娘はわたしの腹違いの妹じゃったのじゃよ。やがて友人と娘との間に子が出来た。しかしそれは王位継承者争いの種となったのだ」
「…………」
「娘は出産と共に亡くなり、友人は残された子を手放した。新たな災いに巻き込まれぬように。それがウィリアムの母親だ」
「っ…………」
「ウィリアムは私の初恋の人の……妹の孫なのだ」
やはり、待遇的に何かしら王族と関連はあるとは思っていたが、直系の血筋が関わっていたとは。だからわざと関係のない三流貴族のモンターギュの元に置いたのか。
相続時に王都にお呼びがかからなかったのもそのせいか。使いだけを寄こすにしては金額や相続品が多すぎると思っていた。だが、何故今になって……?
「成人した姿をひとめ見ておきたかったのじゃ」
もう会えないからなと。消え入るような声が聞こえた。
そうだ。王宮の管理下から外れたのだ。遺産はすべてウィリアムの手に渡った。公務的なことでももう王が関わることはないのだ。
「……ウィリアム様は学校をつくるつもりなのですよ。優れた知識や経験をお持ちの方からいろいろご自身も学びたいそうです。人生の師匠としてたまにはご意見などを聞かせていただければ……」
俺の言葉に王様は目を瞬き苦笑した。
「ふふ。そうだな……いつか。機会があれば……」
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