3グレン

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 やがてウィリアムの周りの人間の欲望が浮かび上がってくる。アイツらの目的は金だったのだ。本来なら人間なのだから人間の中だけで育てられるのが一番だとは思う。しかし財産目当ての色眼鏡な人間の手で、あの子の魂が歪められてしまうのではないかと危機感から姿を現すことにした。  彼の身近にいられる立場を手に入れるために。そして執事として屋敷に潜入したのだ。  ウィリアムは成長と共にさらに美しさに磨きがかかった。しかも無防備すぎるのだ。俺から見たら隙だらけで心配で仕方がない。誰かの手に堕ちる前に目立たない場所に囲ってしまわないと。俺は焦った。もう誰にも渡すつもりはなかったからだ。すぐに策を講じてこの辺境地に連れてきた。王都と離れたここなら俺の動きが取りやすい。  もちろんウィリアムはそのことに気づいていない。あの無垢な魂は必要以上に疑う事を知らないのだ。どんなに辛くとも常に前を向いて凛とした姿勢を崩さない。内面の強さと美しさは何物にも劣らない。俺はますますウィリアムに傾倒した。  本当は手折りたい。汚したい。めちゃめちゃに甘やかして俺だけしか見れないようにしたい。  襲い来る飢餓の衝動のまま寝静まってからその唇を奪ってしまうときもあった。 (これは俺のモノだ。俺だけのモノ。早く全部を奪っちまいたい)  そこから時々淫らな夢を見させては慣れさせていた。 (バレたら嫌われちまいそうだ。だから出来るだけ優しく。身も心も全部俺のモノにしてしまわないと)  静かにゆっくりと確実に徐々にその心を捕えて行ってやる。俺は今までこれほどまでに何かに執着したことはなかった。なんなんだこの感情は?  これがひょっとして人で言うところの愛情ってやつか?
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